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姫プは遊びじゃありません!!  作者: ひな
第9章 終日寝太郎は目覚めない
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02

 本来、魔神は睡眠を必要としない。

 無限の生命力があるから、休む必要が無いのだ。


 ……と言っても、実際に人類が彼らの安眠を妨げるほどに追い詰めた実績がある

わけもなく、あくまで彼ら自身がそう言っているのを聞いただけだけれど、否定す

る材料が無いため、きっとそうなのだろう。


 それでも眠る個体がいる。普段の食事と同じく、必要は無いけれど人間のロール

プレイを楽しみたいのか、単に眠る事が好きなのか、どちらかは分からない。

 ただし、学校にいる時間のほとんどを眠って過ごす終日寝太郎という個体が、後

者である事に疑いの余地は無い。彼の住居が、それを如実に示していた。


 彼の家は、丸ごとが巨大なベッドだった。


「さあ、あがって。靴を脱いだら好きに寝転ぶといい」


 私を促すその言葉通り、玄関の僅かな空間を残して全てが広々としたマットレス

と毛布に包まれている。家の中の壁を全てくりぬいているのか、ところどころに柱

が立っている他には障害物は何も無く、全ての壁に青いカーテン付きの窓が貼りつ

いている。元々二階建ての家だったのか、天井はやたら遠い。夜になったらもう床

に就くつもりでいるのか、電灯は一つたりとも見当たらない。家具も僅かな収納を

除き、テーブルと椅子さえも存在しない。マットレスの上にあるのは、たった今彼

が無雑作に置いたスクールバッグのみだった。


 生活感の欠片も無い、常軌を逸した部屋だ。早くも床に寝転がる終日さんを尻目

に、私は戸惑いながら両膝をマットレスに沈めた。


「行儀がいいんだな。それとも緊張しているのか? 遠慮はいらない。リラックス

しないと、安眠も出来ないだろ」


 床に両肘を付いて私を見上げながら、終日さんが要領の得ない言葉を吐く。まる

で眠りが人生の中心とでも言わんばかりの言い草だ。生憎ながら、よく知らない魔

神を前にリラックス出来るほど、私はいかれていないつもりだ。


「え、ええと……あの、終日さん。それで、勉強の方は……」


 早速本題を切り出そうとした私の言葉を、終日さんは「せっかちだな」と手で制

した。


「時間はたっぷりあるんだ。枕を高くするみたいに、のんびりやろう」

「は、はあ……」

「まずきみはおれと話すのは初めてだろう。おれの名前は知っているか?」

「は、はい……終日、寝太郎さんですよね」

「いい名前だろう。気に入ってるんだ」

「え、ええと、なんて言ったらいいか……」

「気を遣うな。眠たい事を言うくらいなら、いっそ寝た方が得だ」

「……」


 終日さんは表情を変えず、じっとこちらを見つめている。床に寝そべるって私を

見上げる彼と、正座をしながら見下ろす私。傍から見るとシュールな絵で、いかに

も城菜さん辺りが面白がりそうな構図ではあるけれど、こちらを見つめる青い星が

瞬き一つしないから、異様なほどの圧を感じてしまう。


 何を考えているのだろう。彼は何を思って、私をここに連れてきたのだろう。


 いろんな仮定を頭の中で浮かべて、思わず背筋を張る。そんな私を見てどう感じ

たのか、終日さんは「ふん」と鼻を鳴らし、一度だけ瞬いた。


「おれはきみの名前も気に入っている」

「え?」

不破(ふわ)夢路……うん、悪くない。おれの一番好きな言葉が入っているからな」

「……夢、ですか?」

「夢はいいぞ。この世の全てが夢ならば、どんなに良いかと思わないか?」

「……常々思っています」


 実際には、悪夢みたいな現実が横たわっているだけだ。目の前の魔神だって、そ

の一部である。


「夢……そうだな。ゆめ。いい響きだ」

「あ、あの……終日さん?」

「どうした、ゆめ。まだ何か懸念があるのか?」

「え?」


 もしかしてこの魔神……私の事を『ゆめ』って呼んでる?

 別にいいんだけど……どうもテンポが独特だなあ。


 そんな呆れが顔に出ていたのかもしれない。終日さんが私を見上げ、眉を顰めて

いる。せめて愛想よくしようと笑みを浮かべて見せたけれど、あまり効果は無かっ

たらしい。彼は小さく吐息を零し、「仕方が無いな」と言った。


「どうやらきみには安心毛布が必要らしい」

「え、ええと……?」

「言葉通りだよ……ほら」


 そう言って、終日さんは何かを投げ渡してきた。ぽふりと私の両腕に収まるよう

にして落ちてきたのは……枕?

 大きくて真っ白で、とても柔らかい。思わず顔を埋めたくなる安心感に満ちたそ

の物体を、彼は今どこから取り出したのだろう。明らかに、無から取り出したとし

か思えないんだけど……


「それはおれの能力で具現化したんだ」

 案の定、彼はあっさりと秘密を明かした。

「『夢枕<うつつ>(リアルカム・トゥルー)』。触り心地が良いだろう」

「は、はい……でもどうして今、これを?」

「ゆめがまだおれを信頼していないからだ」

 自分の手元にもう一つ枕を具現化させながら、終日さんが私の手元を見やる。

「大神が言ってたのを聞いたが……きみは魔神について調べてるんだろ? だから

俺の手の内を一つ明かした。手土産として夢の中にでも持っていくといい」

「あ、ありがとうございます……」


 どうやらこの個体、自分で言っているように私をそれなりに気に入っている。ま

だろくに私の事を知らないだろうに……なんという大盤振る舞い。ありがたすぎて

逆に申し訳ない。果たして私は彼の期待に応える事が出来るだろうか。


 いや、頑張ろう。自分が助かるためという以上に、彼が私に失望しないうちに信

頼を勝ち取って、他の能力を教えてもらったりしよう。あわよくばもっと気に入っ

てもらって、いざという時に助けて貰えたりしないかな。


 私の表情に希望めいたものが溢れたのを読み取ったのか、終日さんの口元が僅か

に綻んだ。


「さて、おれの能力がどういうものなのかを教えよう」

「は、はい! どうすればいいですか……?」

「まずは枕に頭を乗せてごらん」

「はい!」


 期待に応えようと、私は何も疑う事なく彼の言葉に従った。

 手元の枕を頭に乗せ、寝転がった。


 瞬間、脳に蕩けるような快楽が走った。


「あっ……」


 自分の口から出たとは思えないほど気の抜けた声に、戸惑うだけの思考力が湧い

て来ない。瞼が鉛のように重くなって、試しに閉じてみるとすごく気持ちいい。

身体を伸ばすともっと心地良い気がしたので、それに従った。


 暗くなった視界に、衣擦れの音一つ聞こえない静かな空間。

 私の意識はあっというまに落ちていった。





 閉じた意識が覚醒した時、窓から差し込む太陽光が橙色に染まっていた。


 今……何時だろう。朝のホームルームのすぐ後に学校終わって、それからすぐに

ここに来て……それでいてあの空の色。


 まさか私、夕方まで眠っていたの……!?


 慌ててスマホを取り出し、時刻を確認してさらに愕然とした。

 私の考えは間違いだった。だって今の時刻は……朝の七時。


 嘘でしょ……? 私、一体何時間眠っていたの……?


「驚いたか? これが『夢枕<うつつ>』の効果だ」

 私の傍で瞼を擦りながらのっそりと立ち上がった終日さんが、誇らしげに胸を張

った。

「枕に頭を乗せた生物はすぐに眠る事が出来るんだ。眠る時間とか眠りの深さとか

は、中のダイヤルを弄って調整できる」


 その言葉に従って枕をぐるぐる回し、ジッパーを発見したので開いてみる。する

と中には「うわあ……」彼の言う通り、たくさんのダイヤルがあった。


 『最高の眠り』『00000021』『時間』『夢見ない』


 なんだこれ。ダイヤルを回すと、数字や言葉が変わっていく。『最高の眠り』と

書かれた部分を回すと『普通の眠り』とか『寝覚め最悪』とかが見える。数字は八

桁、『時間』の部分は『秒』から『年』まである。最悪の場合一億年近く眠らされ

る可能性があるの……? 『夢見ない』は『夢見る』の二つだけみたいだけど……


 いや、この際そんなのどうでもいい!


「テスト勉強、どうするんですか!? 私、全然やってません!」

「心配いらない。おれもゆめと同じ時間寝ていたから、条件は一緒だ」

「心配しかない……」


 終日さんはテスト勉強に自信があるから私を連れて家に来たんじゃないの? 今

のところただ一緒に寝ただけなんですけど……これ、意味あった?


「親睦が深まったからいいだろう」

「……喜ばしい事ですけど、状況は全く変わっていませんよ」

「問題無い。おれに考えがあるから」

「……も、もしかしてカンニングとか考えてます?」

「カンニング? ふふん、寝言は寝て言え」

 本当に面白かったのか、終日さんは口元を押さえて身体を震わせた。

「やりたいなら止めはしない。でもあの委員長相手にそんな事するのはよっぽどの

命知らずだ」

「で、ですよね……でも」

「後で全部分かる。今は一旦帰って学校に行く支度をしなよ」


 私の言葉を聞かず、終日さんはそのまま「おれは二度寝する」とまた枕に頭を乗

せて寝息を立ててしまった。どうやらこれ以上訊いても無意味らしい。仕方が無い

ので私は彼の言葉通り、おいとまする事にした。


 どうしよう……このままじゃ完全にお先真っ暗だ。


 でももうどうしようもない。どうこう出来る時間も能力も無いのだから、終日さ

んの策とやらに乗っかる他無い。


 でも彼は多分、三途璃さんの能力を知らない。カンニングはしないと言っていた

けれど、あの鬼委員長はその他のあらゆる不正をも封じる事が出来る。もしも彼が

何らかの方法で私と不正を共有しようと考えているのなら……あれ、詰んでない?


 どうしよう! 今からでも何か有効な策を打てないだろうか……!


 などと考えても、思いつかないものは思いつかない。出来もしない事はやっぱり

出来ない。帰宅してシャワーを浴びて、身支度を整えて、家を出る頃にはもういつ

もの時間だ。照が待ち構えていて、いつも通りの登校が始まる。


「むーちゃん、今日は随分顔色がいいね! 何かあったの?」


 照が笑顔でそんな事を言う。さすがに二十時間以上眠った甲斐があったのか、体

調だけは万全だ。この街に来てからこっち、気の休まらない時間が続いたからか、

身体がすごく軽く感じられる。そのせいで肝心のテスト勉強がおざなりになってい

るので、完全に無意味なんだけど。


「ねえねえ、終日君とのお勉強会どうだった? 本当はわたしも一緒にやりたかっ

たけど、三途璃ちゃんに止められちゃった! でもわたしもむーちゃんに負けない

ように、昨日はたくさん勉強したから大丈夫! いやあ、たまには頑張るのも悪く

ないよね! 清々しい気分だよ!」

「……」


 無邪気な照の言葉がナイフのように胸に刺さる。罪悪感と後ろめたさが、小市民

的な私のメンタルを抉る、抉る。


「照……今までありがとうね」

「急にどうしたの!?」

「私、もう駄目かも……ああ、お腹痛くなってきた……」

「気のせいだよ!? 滅茶苦茶顔色いいもん!」

「今日テストって、もしかして夢じゃない……?」

「現実逃避しないで! がんばろ! ね?」


 照がゆさゆさと私を気遣って背中をさすりながら、しかし後退を許さない。

 教室に連行され、あれよあれよとテストが始まった。


 事前に三途璃さんから説明があった。曰く、教科は全部で十一個。

 現国、古文、数Ⅰ、数A、英語、日本史、世界史、化学、生物、美術、保健。う

う、数が多いなあ……


「試験は二日に分けてやるわよ! 採点はその日のうちにやってもらう事になって

るから、もしも赤点だったら覚悟するように! それと……」


 我らが委員長は教室に集まった一同にびしりと指を突き付け、全員に言った。


「今からテスト返却までの間、あらゆる能力の使用を禁じるわ。さもないと、全教

科赤点にするから気を付けなさい!」


 そう言った三途璃さんは、明らかに『ブリタンの憐れな子羊(ダブルバインド)』を使用していた。

能力を持たない私には違いが分からないけれど、一部の魔神がざわついていた。


 これで魔神達は不正のために能力が使えない。もはや学力のみでテストに臨むし

か無いわけだ。


「……」


 こっそり後ろを振り返る。しれっと登校している終日さんは、ふてぶてしく船を

漕いでいた。動揺は全く見られない。この状況さえも、彼の想定内だとでも言うの

だろうか。


「それじゃあ先生、テストを始めて下さい!」


 三途璃さんの号令の下、問題用紙とマークシートが配られた。ついにテストが始

まる……


 最初のテストは現国だ。これはまあ、元々勉強の要らない科目だからいい。


 でも次は数Ⅰ。公式なんてほとんど覚えていないから、どうすればいいか分から

ない。幸か不幸か、マークシートは五択。ほぼほぼ当てずっぽうでやるしか道は無

い。運が良ければ、赤点を回避できるはず……!


 次が英語。私に海外からの帰国子女という設定があったら簡単なのに、現実は夢

のように甘くない。文章の意味が分からなすぎて泣きそうだ。これもまた、当てず

っぽうしかない。


 次……日本史か。歴史小説や大河ドラマを嗜む趣味は無い。大体、日本史なんて

今更習ってどうなるというのか。どうせ最後に辿り着くのは、滅亡の現在しか無い

というのに……などと的外れな私の恨みは、運任せのマークシートにぐりぐりぶつ

けておいた。


 お昼休み……珍しくぴりぴりした教室内の雰囲気に気を揉みながら、勉強どころ

じゃない時間を過ごした次が化学。当然ながら化学に明るい私ではない。呪文のよ

うな化学式や単語とにらめっこしながら、いっそ鉛筆を転がして答えを決めた。


 最後は保健。健康だの社会交流だの、スポーツだの性教育だの、どれも今の私に

は必要の無い科目ばかりだ。そうなるとただの暗記科目だし、暗記の時間なんて無

かったから、やっぱり解けない。はいはい、運任せ。


 一日目はこれで終了だ。

 六教科のうち五教科を運に任せた。考え得る限り最悪の結果である。


 いくら五択のマークシートでも、五教科も運任せにすれば、どう考えてもどこか

で破綻するに決まっている。


「いやあ、今回のテストは難しかったですねえ」

 処刑宣告を待つ帰りのホームルーム、忍さんがにこにこと私に向かって話しかけ

てくる。

「どうですか、むーちゃんさん。赤点、回避出来そうですか?」

「ど、どうでしょう……」

「ふふふ、自信無さげですねえ。昨日はろくに勉強出来ずに寝落ちましたか?」

「……す、睡眠学習ですよ」

「寝落ちそのものは否定しないんですね……あなた、可愛いですねえ」

「……」


 実際のところ、ちょっとそれを期待した自分もいた。


 寝太郎さんの『夢枕<うつつ>』……あれの効果に、睡眠学習のようなものも含

まれていて、いつの間にかテスト範囲の勉強が出来ていた……みたいなご都合主義

な展開を、あわよくば望まなかったと言えば嘘になる。


 でも結局あれは本当に、よく眠れた以外の効果は無かったようだ。返却されたテ

スト結果は案の定、現国以外全ての科目が赤点だった。


「そ、そんなあ……」


 テスト結果が返ってきて、魔神達は和気あいあい、悲喜こもごも。めいめいが点

数を競い合い、歓声を上げたり悔しがったり、一喜一憂している。どうやら皆、あ

る程度思い通りの点数を取れたようで何よりだ。


 その喧騒の外にいるのは……二体と一人。

 すなわち私と終日さん、そして三途璃さん。


「さて二人とも」

 忍さんのようにわざとらしい笑みを貼り付けた三途璃さんが、ゆっくりと私達を

振り返った。

「今から何を言われるか、分かる?」

「あ、あの……」

「赤点はあなた達だけだったわよ」


 抑揚の無い声で、三途璃さんが告げた。


 私は凍り付いた。終日さんは……何も言わない。さすがにこの状況では眠ってい

られないみたいだけれど、その顔には何故か焦りは見られない。


 もはやピンチなんてレベルではない。最悪の状況に陥っているというのに……


「ちなみに委員長」

 相変わらず眠たげな声で、終日さんが口を利く。

「この場合おれ達は、過酷な補習とやらを受ける事になるのか?」

「もちろんよ」

と三途璃さん。

「普段の様子を見ている限り、あなた達はきちんと勉強すれば赤点を回避できる学

力があるはずなのよ。それなのにこの体たらくって事は、真面目に勉強しなかった

って事になるわ。委員長としてその怠慢は見過ごせない。しばらく眠る暇も無い日

々が続くと思いなさい」

「……」


 眠るのが大好きな終日さんは、三途璃さんの言葉に顔をしかめた。

 そしておもむろに……何故か私の肩をぎゅっと掴んだ。


「な、なにを……?」

「心配はいらない」


 終日さんは私と三途璃さんを交互に見比べ、優しげに言った。


「これはただの悪い夢だ」


 その言葉とともに、何かが弾けるような音がした。


 瞬間、世界がばらばらになった。


「え?」


 見間違いじゃない。文字通り、世界が壊れ始めた。視界全体がガラス細工みたい

に粉々に砕け、散っていく。


 その様子にしかし、三途璃さんは反応しない。視界の奥にいる照や他の魔神達も

その現象に気付いていないみたいにノーリアクションだ。


 否。この現象が起きているのは……私にだけ?


 気づいたら、砂粒みたいに砕け散った世界が空気に溶け、真っ暗な空間に漂って

いた。上も下も無くなった謎の空間で、訳も分からず藻掻き続け、水面に上がった

ばかりのダイバーのように大きく息を吸い込んで……




「あれ?」




 気が付くと、世界は元に戻っていた。


 身体を起こすと、そこは巨大なベッドの上。『夢枕<うつつ>』に頭を埋めてい

た。橙色の陽が窓から差し込み、思わず目を細める。


 スマホを取り出して時間を見ると……時刻は午前七時を指していた。


「ど、どういう事!?」


 半ばパニックに陥って周りを見渡すと、いつのまにか立ち上がったスターサファ

イアがこちらを向いていた。


「言っただろ。悪い夢だって」

「え……ええと?」


 理解が追いつかない。ちょっと何言ってるか分からない。


 さっきまで、確かに私は教室にいた。朝起きて、家に帰って、照と一緒に登校し

て、テストを受けて、赤点だった。

 間違いない。確かにその記憶がある。どんな問題が出てきて、どういうミスをし

たのかまで、はっきりと実体験のように頭の中に残っている。


 でも今、現実はそうじゃない。


「終日さん……時間を巻き戻せるんですか?」

「違う。言った通り、これは夢なんだってば」

「夢……」


 つまり、今のは予知夢?

 それとも今、あれは単なる夢中夢?


「ええと……あれは一体、どういう夢だったんでしょう」


 頭にたくさんの疑問符を浮かべた私はよほど間抜けに映ったのだろう。終日さん

は噴き出すように笑った。


「強いて言うなら、夢オチだな」

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