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少女

深夜、居酒屋街を無関心に突っ切る少女がいた。


長細い袋を背負い、緑青色のショートヘアを揺らしたその少女は大きなスーツケースを引きながら足早に町の奥に向かって歩いていく。


途中、泥酔した男を支え合う酔っ払いの3人組をちらとみたが、興味なさそうに歩き始める。


少女は道沿いにアイスの自動販売機を見つけると、物珍しそうに駆け寄って吟味ぎんみし始める。


水色と茶色のグラデーションになっている箱を見つけると、少女はボタンを押す。が、出てこない。


少女は首を傾げながら何度もボタンを押す。


しかし、当たり前だが料金を入れなければ出てこない。少女は手に入れられないことを悟ったのか、残念そうにスーツケースを引き行こうとする。


「これが欲しいの?」


唐突に背後から話しかけられ少女は飛び上がる。―――しまった、背後を取られるのは禁忌きんきと教わっていたのに。


警戒一色の目を男に送ったが、男は気にする様子もなく何枚かのお金を自販機に入れ、ボタンを押した。がこん、と音がして表示されていたパッケージと同じものが出てきた。


「はい」


突然渡された箱はちゃんと冷たくて、本物のアイスだった。


「えーっと、ウェルカムトゥージャパン?日本を楽しんでねー」


どうやら外国から来たのだと思われたらしい。でも少女にとっては好都合だった。ヘラヘラと酔った笑顔を向けてくる男にぺこりと頭を下げて歩き出す。


後ろから聞こえてくる酔った人たちの会話を気にすることもせず、少女は歩きながらパッケージを開ける。


ぱくりと食むとさくりとした食感のモナカの中にひんやりとしたアイスが入っている。


爽やかなミントの香りと甘くパリパリとした食感のチョコが入ったアイスだ。向こうと違って、味も香りも食感も格違いに美味しい。これがたった数百円で買えるとは思ってもいなかった。


少女はアイスを片手に、真夜中の田舎道を嬉しそうに歩いて行った。


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