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あなたが決めて

「……ミチェリお嬢様、お願いします……お願いしますよ~……。どうか、その方を許してあげてくださ~い」

「……アキラおじいちゃま、あなたまだいたの?邪魔」


老人は痛みを堪えながら、私に顔を向けると必死に笑顔を作る。


「は、はは、はは……アキラおじいちゃまか……どういうわけか知らんが、この魔女があんたに敵意を持ってないのは確かなようだ。早く逃げるんだ……」


ミチェリは老人の言葉を聞いてしばらく黙っていたが、突然何かを思い出したかのように小さく声を上げた。


「……じゃあ、アキラおじいちゃまが決めてよ」

「へえっ?」

「……アキラおじいちゃまがそのおじいさんを殺してくれるなら、私は消える。これから先、人を襲うこともしない。約束する」


「えっ、あ、あの、それは……?」


「……アキラおじいちゃまがおじいさんを殺さないのなら、私もおじいさんのことは殺さない。見逃してあげる。でも人を襲うことをやめたりはしない。だから、選んで」

「……」


老人は構えを取ったままミチェリを見据えていたが、やがて覚悟を決めたのか深く呼吸をする。


「分かった……爺さん、俺を殺せ。どうせとっくの昔に死んでいるはずの、死体同然の老いぼれなんだ。悩んだりする必要はないぞ」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!ご老人!やけっぱちになってはだめだ!」

「ははは……いいんだよ、どうせ俺には守りたいものなんてもう何も残っちゃいない。金もない、土地もない、家もない、家族もいない。弟子はいたが、皆戦争に取られて死んだ。思い出は苦しいものばかりだ。俺は死人と何も変わらない。ただの抜け殻だ」


「……いいや、ご老人!それは嘘だ!」


「え、えっ、嘘!!?何が?何が嘘だって……!??」

「……??」


「あんたは村を守るために立ち上がったんだろ!自分の命や財産よりも、もっと大きな物のために戦っているじゃないか!」

「……何を言って……はは、ははは、馬鹿を言うな。こんな死に損ないが守れるようなものは何も無い……。あるのは、この体だけだ。それだって、今にも終わろうとしている。俺にはもはや何も残ってな……」


「違う!あんたは異世界に来たばかりの私、そうだ、この何の役にも立たない気味の悪い老人を気遣ってくれた!まさか私のような老いぼれの命が大切だとか金になりそうだからと思ったわけではないだろう、私を見捨てたりすればあんたは自分の中に残っている本当に守りたい何かを失ってしまうんじゃないかと思ったからそうしたんじゃないのか!?ええ!違うか!?私は天才だ!それくらいわかっているぞ!」


「……」

「……」


「あんたの言葉には誠実さがあった。あんたの献身は本物だった。あんたのその情熱だって健在だ!優しさも思いやりもあんたにはちゃんと残ってるじゃないか!ご老人、あんたは決して死人などではない!だからこそ今ここで、あこれ痛ってぇえええぇえぇぇっっ!!!??」


「どうしたんだ爺さん!?」


突然、手のひらに生じた痛みに叫び声を上げてしまう。慌てて右手の様子を見ると、いつの間にか手首が氷で包まれ、ナイフのような形状に変形していた。

ミチェリの仕業だろうか。

まるで神経を突き刺されるような、シュレッダーに手を突っ込んでいるような狂気じみた激痛が襲ってくる。このナイフで老人を殺せということなのか。


「早く決めてよ。私かおじいさんを刺せば、その手は元に戻るから」


「あぁひぁあぁ、てっ、手がぁあぁあ!ひっぽぉおぁあ!!」

「爺さん、早く俺を殺せ!悩まなくてもいい!」

「アヒヒ!痛いのはもう嫌だよぉおぉ!あひあへは!死ぬぅうぅ!右手が死んでしまうぅう!誰か助けてくれぇえ!あははぁはは!はぁあははは!!」


「……」

「爺さん!早くしろ!あんたの手がダメになっちまう!」


老人は歯を食いしばりながら片手で私の腕を取ると、自分の首筋に氷の刃を突き立てようとする。しかし、その試みはミチェリによって制止され、老人はあっさり地面に転がされる。


「……駄目。アキラおじいちゃまが決めることだから」


ああ、私はどうすればよかったんだ。


こんなことになるならさっさとトウメインを飲んで全裸になって逃げればよかったじゃないか。なんてバカな奴なんだお前は。


だけどな、そんなことはもうどうでもいいんだよ。

痛い、ダメだ、耐えられない。一刻も早くこの氷のナイフを手放したい。でも、そうしたら老人に刺さってしまうかもしれない。それだけは避けなければ。ああ、どうしよう。頭がおかしくなりそうだ。


私はナイフを振り上げる。

老人は目を瞑る。ミチェリの目は大きく見開かれる。

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