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郡山駅に到着し、改札口目前で背後から声をかけられた。
「けーちゃんッ!」
そこには、ニンジャEX400Gに腰掛ける真弓の姿があった。
「真弓さんッ!?」
手を振る彼女だけでなく、周りに遊佐と佐島もおり、急いで駆け寄っていった。
「皆どうしたんですかッ!?」
「見送りに来ちゃった! イェイッ!!」
驚くケータに、真弓はサプライズ成功して御満悦の様子。
「久しぶりに真弓から連絡来て何事かと思ったら、“けーちゃんの見送りに行くぞ”、って言い出しされてよ」
遊佐は、グラサンをかけ、先ほどまで寝ていたのか、気怠げにあくびをする。
「いやァ、やっと機嫌直ったかと思ったぜ」
「いやッ! アンタは、まだ執行猶予中だからッ!!
許してないからッ!!」
「なんッ!?」
佐島は、罪の重さに衝撃を受けたのだった。
「てか、真弓さん、バイクの免許持ってたんですね」
「へへ〜ん、そうだよッ。
カッコいいでしょッ!」
ケータがバイクに関心を持つと、彼女は自慢気に胸を張る。
「今度、けーちゃん後ろに乗せてあげるねッ!」
「「「え"ッ!?」」」」
真弓の発言に3人は驚愕し、彼女は、反応に不満を抱いた。
「何ッ!?」
「あの真弓がッ、男を乗せるッ、だとッ!?」
「どんだけ誘ってもフリまくっていたお前がッ!?」
「アンタ等が倫理感ズレ過ぎてるだけだよッ!!」
遊佐と佐島が、幼馴染みの意外な行動に動揺する。
「申し訳ないんですけど、バイクはちょっと――」
「えッ!? なんでッ!?」
ケータの遠慮気味な態度に仰天する真弓。
「バイクって、タイヤ2本しかないじゃないですか。
転んだ時、ただじゃ済まないっていうか、特に後ろって体重移動をミスったりしたら最悪…」
「そッ、そんな…」
彼の暗い表情に、真弓は心底落ち込むと、遊佐が肩に手を置いてきた。
「フラれる気持ち、これでわかったろ?」
ニヤニヤしながら話す遊佐に、真弓は鋭い視線を送る。
「SSKッ! これ、俺からの餞別ッ!!」
佐島からナイロン袋を手渡され、中身を覗くと、缶チューハイが2本入っていた。
「おいッ!? おまッ――!?」
「 電車の中、暇だろ?」
「ちょっと!? けーちゃんに何持たせてんのッ!!」
無邪気な笑みを浮かべる佐島に、真弓が叱りつける。
「何って、日中に飲むからこそ堪らねェんだろうがッ!!」
「そういうこと言ってんじゃないのッ!!」
「硬ェこと言うなよ。
SSKッ! 今度来たら宅飲みしようぜッ!!」
「いッ、いやァ、 それよりもバーベキューとかの方がいいかなァ」
ケータは、ぎこちない笑みでやんわりと提案の変更を試みた。
「ほらァ、だから――」
すると、佐島が感激のあまり身震いし出した。
「ちょッ、おまッ、それ最ッ高じゃねェかッ!!
酒ッ、タバコッ! 肉ッ!! 最高の組み合わせじゃんッ!!」
「違うッ!! そうじゃないッ!!」
「ダメだ、こりゃ…」
3人のやり取りを見て、ケータは堪えきれず、とうとう笑い出してしまった。
「――はァ、やっぱ、皆変わってねェな。
あの頃とさ」
そう言うと、遊佐が鼻で笑い、グラサンを軽く上げ直した。
「まあ、その、なんだ。
今回、ハプニング続きでロクに話すこと出来なかったが、会えてよかったよ」
遊佐の発言で、ケータは、ふと当時の痛々しい記憶が鮮明に蘇ってきた。
昔、佐島も含めて“超能力三人組”という中二病全開のグループで喧嘩していた時期があり、その時、各々属性を担当していたのだ。
ちなみに、佐島は“土”である。
――あのことは他言無用だ、いいな!?
――わかってるよ!!
2人は、アイコンタクトで黒歴史を再度埋め直したのだった。
「そういえば、何でお前等、真弓さんがその“道楽”だって知ってたんだ?」
ケータは、今更ながらの疑問を二人に尋ねてみた。
「あ〜」
「知ってたも何も、噂を広めたのオレ等だし」
「…えッ!?」
衝撃の事実に、ケータは目を丸くした。
「たまたま喧嘩してんの見かけてよ。
フルフェイスかぶってたから最初分からなかったが、逃げた時に乗ってたバイクのナンバーと特徴をハルが覚えてて、真弓の家に置いてあったのと一緒じゃね!?
ってなってよ」
「それで、とりあえず真弓にカマ掛けてみたら、分かりやすいくらい挙動不審になって、お前かい――ッ!
ってなったわけよ」
真弓は、気まずくなって目線を逸らし始める。
「…まさか、見られていたとは思わないじゃん」
「だから、今後やられた奴等から報復を受けるかもしれねェってことで、“道楽伝説”を広めたんだよ。
もし、そいつらが耳にしても、多勢でたった1人の一般人に負けたってなればプライドに傷がつくし、自分たちが加害者だってバレりゃ他の不良から雑魚認定されて狙われやすくなる。
危険な賭けだったが、上手くいって良かったよ」
「全然上手くいってないしィッ!?
おかげで全く関係ないけーちゃんが狙われたんでしょ!?」
「いや、それはさすがに誰も想定してなかったっていうか――」
「まあまあまあ、それは仕方ないですよ」
遊佐が真弓に責められていたので、ケータがとっさに擁護した。
なるほど、今まで道楽に挑もうとする輩がいなかったのは、この2人が防波堤となって諦めさせていたということか。
ケータは妙に腑に落ちたのだった。
「そういや、ケータ。
お前、時間大丈夫なのか?」
遊佐が発射時刻を気にし、ケータは腕時計で確認する。
「あと15分くらいかな。
そんじゃ、そろそろ――」
「あッ! 待って待って!!」
真弓が慌てて静止し、バックから自撮り棒を取り出した。
「写真撮ろッ! 写真ッ!! 皆でッ!!」
「おいッ!? 今かよ!?」
「今しかないじゃんッ!! ほら、けーちゃんもッ!!」
「はッ、はいッ」
真弓に手招きされ、急いで彼女のそばに駆け寄ると、自撮り棒を伸ばし、スマホを取り付けた。
タイマーもセットし、4人はカメラに集中し出す。
「ほらッ、もっと寄って!」
「えッ!? もっと!?」
画面には十分収まってるはずなのだが、真弓の指示にケータは戸惑いながらも、さらに彼女に顔を近づける。
「おい、なんかケータ近すぎねェか!?」
「だッ、だよね!?」
「うるさいうるさいッ!!」
「オメェ等ッ、カメラ目線――ッ!!」
パシャ――ッ。
こうして、ケータのGWは、幕を閉じたのであった。




