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: 名残
向かった先は、少々錆びついた白い箱型の犬小屋だった。
正面が鉄合子となっており、畳一畳程の大きさで、近づくことに土と獣の匂いが濃くなっていった。
男の子は、中に放り込まれ、閂に錠をかけられてしまった。
ここの主であるドーベルマンは、急な訪問に驚き、驚いて飛び起きてしまう。
男の子は、格子を掴み、泣きながら大声で嘆願した。
ここから出してと叫ぶも返事は返ってこない。
元凶は、そんな男の子に一切同情せず、忌々しく蔑む視線を送っていた。
――うるせェェェェェッ!!
元凶は、男の子の泣き声を掻き消す程の金切り声を発し、鉄格子に蹴りを入れた。
男の子が怯み、とっさに片隅に下がると、元凶は家に籠もってしまった。
男の子は元凶の名を何度も呼び、空虚の住宅地を響かせたが、救いの手を差し伸べる者は誰もいなかった。




