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KEEP OUT  作者: 嘉久見 嶺志
2××3/5/5
54/58

: 5p.

――去年、16歳の誕生日を迎え、普通自動二輪免許も難無く取得。


フルフェイスのヘルメットやグローブ等を両親からプレゼントされ、ママの愛車ニンジャEX400Gも譲り受けることとなった。


早速、試し乗りでコンビニへ向かうと、大勢の不良達が店前の駐車場でたむろしていた。


気にせず無視して店に入ったのが大きな失態だった。


駐車場に戻ると、ニンジャが忽然と姿を消していたのだ。


先ほどまでいた不良たちもおらず、慌ててスマホを開き、GPSで場所を特定。


いざそこへ赴くが、不良たちが数の圧でウチに近寄ってきた。


ママが毎日手入れしていた大事なバイクをこんな奴らに渡したくない。


緊迫した状況下、ウチの中で微弱な光が一気に強く輝きだし、頭の中が真っ白になった。


気づいた時には何十人もの不良たちが地面に転がっており、ウチだけが立っていた。


ウチは怖くなり、バイクに乗って急いでその場から逃げ去ったのだった。




「――なッ、何突っ立ってんだでお前等ッ!!

さっさと行けでェッ!!」


曳地が焦ると、囲が戸惑いながらも彼女にめがけて突進していく。


しかし、最初に襲いかかった疳之虫の拳に触れた途端、鉄板の上に焼かれた肉の音が、部下の足を止めた。


「ぎゃァァァァァッ!!」


そして、真弓は、その者の腕を掴むと、悲鳴とともに白い蒸気が立ち上った。


声が止み、地面に倒れた仲間を間の当たりにし、怖気付くが、彼女がゆっくりと歩み寄っていった。


「うッ、うわァァァァァッ!!」


やけになった部下たちが、力任せに実力行使し出すが、当たるどころか、全ての攻撃を避けられ、受け流されてしまう。


バランス感覚がよく、機敏で柔軟な体をしているせいか、動きがダンサーのようだった。


ケータは、隙があれば疳之虫を祓っていく彼女を見て疑問を抱く。


「あいつはな、常人の何倍も優れた五感を武器にしているんだ」


すると、佐島が察したのか、真弓の能力について解説し始めた。


「真弓は、動物並の五感を駆使して相手の動きを予測し、直感で危機察知することができる。

だから、あいつに一撃食らわせるなんて、ほぼ不可能なんだよ」


それを聞いたケータは、ハッとした。


そういう事かッ!


言われてみれば、ケータが真弓の前で疳之虫を祓っても動じる様子はなかった。


それは、自身も経験者だったからだ。


そして、なぜケータがいる場所を知っていたのか?


それは、彼の匂いをたどっていたからだったのだ。


ケータは、数日間の彼女の行動に合点がいったのであった。


一方、次々とさばいていく真弓を見て、曳地は、焦り出した。


「そッ、総長ッ!! この状況ガチでやばいッスよ!!」


嫌な汗を吹き出す曳地に、取り巻きが耳打ちしていると、恐怖でいても立ってもいられなくなった部下たちが、真弓に背を向け始めた。


「おいッ!! テメェ等逃げんなでッ!! おいッ!!」


曳地の精神を無視し、奥病風に吹かれた部下たちは、どんどん前から離れていった。


「はッ、そりゃそうだ。

そこらの寄せ集めで出来た烏合の衆、テメェ如きがまとめられるわけねえだろ」


佐島はこの滑稽な光景に嘲笑った。


「仲間ってのは、こいつとならやっていける、こいつのためだったらなんだってやる、そういう自分(テメェ)の信念に共感してくれる奴らだけが自然と集まってくるもんだ。

刀振り回すだけで出来たチームなんざ、いつ崩れてもおかしくない瓦礫の山だろ」


ポケットからタバコを取り出し、一服しながら江流暴崩壊を見届る。


「くッ、くそがァァァァァッ!!」


すると、曳地が左腕の銃を構え、霊弾を乱射し始めた。


「危なッ!!」


流れ玉がこちらに来たため、ケータと佐島は、すかさずその場から離れる。


「なんで――ッ!?」


真弓は、銃口を見て弾道を読み、避けていくどころか、少しずつ曳地に接近していった。


「なんでだでェェェェェッ!?」


彼女が目と鼻の先まで距離を詰めてきた途端、曳地は、直刀を振り下ろした。


「来んなでボケェッ!!」


力任せで斬りかかるが、全て見切られてしまい、横腹に蹴りをお見舞いされる。


「うぐッ!!」


内臓が悲鳴を上げ、前に屈んだところを真弓の右拳が炸裂する。


「がはッ!!」


彼女よりも大きな体格がバランス崩し、地面に倒れた。


「ざけん――ッ!!」


とっさに頭を上げると、鋭い眼差しで曳地を見下ろし、息が詰まるほどの圧を発していた。


「ひッ――!!」


真弓は、相手のパンチパーマを乱暴に掴み、曳地の疳之虫を浄化したが、蒸気とともに悲鳴を上げ、白目になった途端、体の力も抜けていった。


「終わったか――ッ!?」


佐島が気を緩めた次の瞬間、思いがけないことが起こった。


「おッ、おい!? 真弓ッ!?」


真弓は曳地の顔面を殴り始めたのだ。


佐島の声は届かず、引きちは鼻じを出し、どんどん醜くなっていく。


「真弓ッ!! やめ――ッ!!」


取り巻きも尻尾を巻いて逃げていく中。 ケータが急いで駆け寄り、真弓を羽交い締めにし始めた。


()()()()()ッ!!

もういいッ!! 終わったよッ!!」


髪の毛を道連れに曳地から引き離すが、真弓は抗い続けている。


「まーちゃんッ!!」


「――ッ!」


ケータが必死に昔のあだ名を呼び続けていると、真弓は我に帰り、殺伐とした霊圧が徐々に弱まっていった。


「けーちゃん…?」


「ふゥ、よかった…」


ケータは安堵し、真弓からゆっくりと離れる。


「これ、ウチがやったの?」


「そうですね」


「そっか、またやっちゃったか…」


真弓は、周囲に倒れている不良たちを見て悟る。


「真弓さん、真弓さんも燈部だったんですね」


「トモシベってのは、なんだか分からないけど…。

うん、けーちゃんと同じことが出来るよ」


まさかオレ以外の燈部がこんなところにいただなんて。


ケータは、他の燈部に初めて出会い、驚きを隠せなかった。




――ある日、大暴れしてから五感が鋭くなっちゃってね。


時間かけてある程度まで抑えられるようになったんだけど、キレると相手の目、仕草、呼吸、体温、全てが手に取るようにわかって、動きが遅く感じちゃうんだよね。




「――ただ、感情任せにしちゃうと、止まらなくなっちゃうんだけど」


…これは、藤代家に相談しよう。


真弓の話を聞いて、まだコントロールが未熟だということが判明した。


「そういえば、けーちゃん、さっき――ッ!?」


すると、一台のバイクが、ケータ達の前に飛び出して来た。


「ハルッ!?」


「ハルちゃんッ!!」


二人は、一目で遊佐だと分かり、彼が左足を軸にドラッグスター400を急ブレーキしていく様を注目する。


「無事かッ!? お前等――んッ!?」


遊佐は、真弓達を見るなり、目を細める。


「…」


どうやら視線の先にあるのは、ケータだった。


「ッ!! あ〜ッ!! “水のケータ”ッ!?」


「ッ!? まさかッ、“風のハル”ッ!?」


ん――ッ!?


遊佐とケータの頭の中に、忘れ去られていた黒歴史が掘り返されたのであった。





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