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郡山駅西口に到着したケータは、時計を確認する。
現時刻、9:23――。
よしッ、計画通り。
予想していた時間に来れたため、自然と口角が上がる。
時間的に余裕があり、とりあえずコンビニへと足を運んだ。
雑誌コーナーへ行き、週間少年誌を手に取る。
これから赴く場所は、自分にとって大きな一歩となるので心が踊る。
そんな時だった――。
「お前ッ!」
声をかけられ、不意に振り向くと、柄の悪い4人が立っており、そこには、見覚えのあるが顔があった。
「こッ、こいつですッ!!」
弘明がケータに指をさし、隣のやつに慌てて伝える。
「間違いねェのか?」
「はッ、はいッ!! 間違いないッス!!」
先ほどまで上機嫌だったケータの表情が徐々に陰り、曇っていった。
同じく西口のヨドバシカメラの店舗前で真弓が、辺りを見渡していた。
「けーちゃん、体力あるなァ」
ケータを探し求めて駅前まで歩いてきた彼女は、足に軽い疲労感が溜まっていた。
連絡先交換後、ケータに遊びの連絡を入れたかったが、どう誘えば良いのか分からず、勇気を踏み出すことが出来ずにいた。
とりあえず買い物を口実に会えないか、八百屋に訪れたところ、店主の吉村から駅前に向かったと教えてもらい、今に至る。
ふと、歩道の向こうにあるコンビニに目をつけ、一歩踏み出したその時、1台のバイクが彼女の前に立ちはだかった。
リアサスを下げ、地面へとマフラーが伸びている黒艶のドラッグスター400。
真弓の知り合いで、このバイクに乗っている者は一人しかいなかった。
「ハルちゃんッ!?」
「毎度ォ」
ヘルメットを外し、グラサンをかける遊佐。
「なんでハルちゃんがいんの!?」
「お前が着拒してッからだろォ?
代わりにを司に頼んだら、あいつも着拒されてるって言うし――」
「だってハルちゃん、毎回しつこく口説きに来るから」
「そんだけ本気だってことじゃ〜ん」
「そう言ってハルちゃん、5人ぐらい彼女いるじゃん」
「惜しい、6人だな」
「ろッ!? …ツッキーといい、アンタ等マジで最低ッ!!」
ふしだらな幼馴染み達に、かなり引いた真弓だった。
「それで? 何のようなの?」
「あのよ――ッ」
すると、向こうのコンビニから罵声が聞こえてきた。
「待ちやがれッ!!」
そこには、見覚えのある人物ががコンビニから飛び出していたのだ。
「けーちゃんッ!?」
後から見知らぬ者たちが続き、ケータを追って走り去ってしまった。
ケータは商店街を通り、狭い路地裏を駆け抜けていく。
彼を追跡する弘明達だが、足の速さと体力がついていけず、肺が悲鳴を上げていた。
「ちッ、ちくしょ…ッ、はァ――」
江流暴の1人がスマホを取り出し、他の部下たちに位置情報を伝えているその時だった。
「ちょっと待ったァッ!!」
真弓が彼らの前に立ちはだかり、制止を呼びかけた。
「まッ、真弓じゃねェか…」
「アンタ達ッ、けーちゃんに何の用!?
報復でもしようってのッ!?」
「うるせェッ!! 今、お前に構ってる暇ねェんだッ!!
道楽を逃しちまうだろうがッ!!」
「はッ!? 道楽ッ!?」
弘明の発言に疑問を抱いていると、遊佐が喘鳴で到着し、膝に手をついた。
「げッ!? テメェはッ!?」
弘明は、相手が遊佐だと知って一瞬怯んだ。
「ハルちゃんッ! 出番だよッ!!」
「えッ!? 何ッ!?」
酸欠で苦しい中、急な指名に対応が追いつかない。
「あの変態童貞野郎に鉄槌をお見舞いしてッ!!」
「あんッ!?」
状況が読めない中、息を整え、汗を拭いながらゆっくりと姿勢を正す。
「詳しい事情は知らねェが、お前のダチかなんかだろ?」
「ダチってか、けーちゃんだよッ!? けーちゃんッ!!」
「誰だよッ!?」
ケータのあだ名を口にしてもしっくり来ていない遊佐だった。
「あ〜ッ!! 話は後ッ!!
とにかく、アイツ女子の敵だからッ!!」
弘明を指さし、ケータが走り去った方へと駆け出していった。
「…それで? お前、何やったよ?」
遊佐は、弘明を横目に尋ねる。
「別に、テメェには関係ねえだろッ!!」
「そういうわけにいかねェんだわ。
女子を泣かせるような奴は許せないタチなんで――ねッ」
そう言うと、遊佐は突っ込んでいき、弘明達は身構えるが、何の意味も持たなかった。
「ごばッ!!」
江流暴の2人が後ろへとのけぞり、地面に叩きつけられた。
「てッ、テメェ!!」
素手で沈めた相手に、残りの2人が疳之虫を顕現させ、臨戦体制を取った。
「それによ、あいつは俺の嫁候補なんだわ。
手ェ出すなや」
鋭い眼差しを突きつけられて怯んでいると、こちらに向かってくるバイクが視界に入ってきた。
「おおッ!! 来た来たッ!!」
江流暴の構成員が応援に駆けつけ、やがて、背後にもバイクで行く手を阻まれてしまった。
数は10人と増え、全員、疳之虫で剣や爪、鞭のような尾を出し、多勢の余裕から勝ち誇った笑みを浮かべていた。
「遊佐ァ、さすがのオメェでも、この数は厳しいんじゃねえのか?」
バイクのナンバーを目にし、“会津”の表記に嫌気がさした。
「おい、最後の警告だ。
こいつ等から手を引け。
こんな奴らに付き合うとロクな目に合わねェぞ」
「うるせェッ!! 喧嘩に負けた奴は、勝者の言う通りになるのが筋だろうがッ!!
それによ、一度入ったら簡単に抜けられねェのが、この不良の世界だろうがよッ!!」
「ははッ、よくわかってんじゃねェか。
よしッ、その覚悟があるんなら手加減はしねェ」
遊佐の両足が、疳之虫によって鎧をまとっていく。
「“飛脚”の名は伊達じゃねェってとこ、教えてやる」




