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KEEP OUT  作者: 嘉久見 嶺志
2××3/5/3
41/59

: 2p.

結局、追い出されてしまった。


真弓は、ため息を吐く代わりにカフェラテをストローで吸い上げる。


郡山駅西口から少し離れた場所、2体の女性の像を前にして、ベンチに腰を下ろしていた。


Gジャンの中は黒のキャミソール。


ショートパンツに細いベルトをし、スラッと健康的で長い足の先は厚底サンダル。


素肌の面積が多い上に、ボディラインがはっきりしているので、通りすがりの人々の視線が、自然と彼女へと集中する。


とりあえず来てみたのは良いものの、特に用があるわけでもなく…。


コスメは間に合ってるし、欲しいゲームもまだ先だし。


ネイルした綺麗な爪でスマホを持ち、欲しいゲームソフトの販売日を確認する。


そういえば、あの男の子の名前、ママでもわからなかったな…。


ママも名前までは思い出すことはできなかったが、興味深い話が浮上した。


当時、彼の家から毎日怒鳴り声と悲鳴が聞こえてくると話題になったことがあった。


夜、子供が外に閉め出されているのを、近所の人たちが何度も目撃しており、見て見ぬふりを続けていたそうだ。


中には、男の子を家に入れてあげて欲しいと仲介してくれる人もいたそうだが、数日後、変わらず外に放り出されていたらしい。


当の本人は、学校だとケロッとしていたし、子供だった自分も気にせず接していた。


でもある日、交通事故にあって入院したと聞いた時は、クラス全員が驚いた。


一応、彼は人気者に属していたし、もし噂が本当なら不幸に愛されすぎているとしか考えられない。


退院後、学校に姿を現した時はクラス全員で祝福したが、どこか雰囲気が違って見えた。


外見は変わっておらず、いつも通り笑顔を振る舞っているが、若干、違和感を察していた。


具体的にどこがとは言いが、以前の男の子ではない、そんな気がしたのだった。


その後、男の子は夏休みに入る前に転校することになり、それ以降会わなくなってしまったけど――。


「あれ? マユミじゃん!!」


突如、声をかけられ、一目で渋い表情を浮かべる。


「げッ」


あいつは――。


細身の赤いタンクトップに花ピアス、カーゴパンツを履いた少年がこちらに近寄ってきた。


「おいおい、そんな嫌そうな顔すんなよ。

傷つくわ〜」


大げさな態度でフランクに接してくるが、粘着質な視線が胸や太腿をなぞってばかりいる。


こいつは、この間ツッキーに勝手に紹介された挙句、会って早々いやらしい目でボディタッチしてきた極めて不快な印象しか残らなかった不良である。


「あれッ!? ひょっとして、 弘明さんが前言ってた――!?」


「まァな」


「マジすかッ!? めっちゃカワ良ッ!」


しかも、似た系統の服装をした少年2人も後から現れた。


「ちょっと、馴れ馴れしく名前で呼ばないでくんない?」


嫌悪むき出しで伝えるが、相手には届かなかった。


「照れ隠しのつもりかよ。

バレバレだっつーの」


「はッ? 意味わかんないんだけど」


「あッ、そういや連絡先交換してなかったよな。

ID教えてくれよ」


「ちょっと!? さっきから何なの!?」


先程から会話が全く噛み合わず、戸惑ってばかりいる。


「何って、俺ら()()()()()()()()()当然だろうがよ」


「はァッ!?」


衝撃発言に思わず目を大きく見開いてしまった。


「付き合ってないけどッ!?

何勘違いしてんのッ!?」


「あ!? 何言ってんだ!?

紹介されるってことは、そういうことだろ!?」


「どう解釈したらそうなんのッ!?

馬ッ鹿じゃないの!?」


この弘明とかいう男が、なぜ先ほどから浮かれていたのか、やっと理解した。


「そもそも告られてもいないのに――ッ」


「あッ!? 付き合いたいって言ったから会ってくれたんじゃねえのかよッ!?」


「んなわけないでしょッ!?

まず1度会うのが普通じゃんッ!!」


ああ、もうッ! これだから不良はッ!!


頭の足りない奴らばかりで腹が立つ。


「あ〜、つまり、お互いのこと知らないから付き合えない、ってことスか?」


連れの1人が割って入り、口を開く。


「それもあるけどッ、それ以前に――」


「じゃあ、これから俺らと遊んで知れば良いじゃないッスか!!」


機転を利かせたつもりか、もう1人も同調し始める。


「良いじゃんッ!それッ!!

弘明さんもその方が良いッスよね!?」


「まァ、確かにな」


「おしッ! 決定!!」


「ちょっと! 勝手に――ッ!!」


一方的に話が進んでいき、この流れはまずいと察したその時だった。


「あのォ、すいません」


突如、見知らぬ少年が声をかけてきた。


その人は黒のニット帽を深くかぶり、左手首にはGショックとアニメイトの袋。


黒いVネックの長袖を肘までまくってリュックを背負っており、デニムにブーツを履いていた。


「あ?」


「いやァ、たまたま耳に入ってしまいましてね。

つい気になっちゃいまして」


場違いな空気の中、ニット帽の人がぎこちない笑みを浮かべていると、取り巻き2人が詰め寄っていった。


「なんだオタク野郎、ヒーロー気取りか?」


「痛い目にあいてェのか? おッ?」


両手を軽く上げ、敵意はないと主張する。


「いやいや、話が全く噛み合ってない上に、一方的過ぎやしませんか?」


穏やかに話している彼に、不良がニット帽をつまんで脱ぎ捨てて見せるが、動じる様子はない。


それどころか余裕すら感じる。


表情が露わになった彼を目にした途端、固まってしまった。


この人、どこかで――。


見覚えのある顔つきに引っかかっていたところで、急に焦げ臭さが鼻をつついた。


「ッ!? ちょっと!!」


「えッ!? うわッ!!」


ニット帽の人が手首にぶら下げていた袋が燃えていたのだ。


その際に、中身のラノベの表紙がわずかに顔を出していた。


急いで手放し、地面に落ちた袋を慌てて踏みつける。


「アッハハハハッ!!

慣れねェことすっからだ!! ボケッ!!」


不良の手にはライターがあり、火を消す彼を嘲笑った。


その様子に他の連中も面白おかしくウケていた。


こいつ等――!!


なんとか消火したニット帽の人は、ゆっくり顔を上げると、先程までとは違う鋭い眼光を不良たちに放った。


「おッ? 殺ンのか?」


興が乗ってきたのか、不良は煽り始め、近寄ってきたニット帽の人に、右拳を繰り出すが、たやすく避けられてしまう。


「がッ!?」


そして、カウンターで素早く不良の顎を掴んだ次の瞬間――。


「あ"ァァァァァッ!!」


突如、顎を掴む手から白い蒸気が噴出され、不良が白目を向き、断末魔の叫びを上げた。


それを見た周りは驚愕し、不良がその場に倒れ込んだ際、反射的に身構えてしまった。



一体、何が――!?


「…おい、クズ共」


穏やかな口調とは裏腹に、彼からにじみ出る殺気が不良達の肌を刺す。


身の危険を感じ、先手を取るため足に力を入れるが、時すでに遅く、 ()()()()()()()()()()()


「体がッ、動かねェ…!?」


よく見ると左目だけ赤く、蛇の眼と化しており、彼が近寄ってくるにつれて恐ろしさが増していった。


「本ってのはなァ――」


やがて、先ほどと同様に顔を掴まれ、握力とは別に体内で熱を発し出した。


「テメェ等のオツムより詰まってんだよッ」


蒸気が解き放たれ、不良は膝から崩れ落ちていった。


残された弘明は、目を大きく見開き、空いた口が塞がらず冷や汗を流している。


ウチは、彼の行動や立ち振る舞いを見ているうちに、ハッと気づいた。


気になっていた点と点が、ようやく全て繋がったのだ。


小学校の頃、よく遊び―――。


いじめから助けてくれた――。


(あこがれ)の男の子――。


「けェ、ちゃん…?」





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