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黒龍と軍鶏  作者: 月夜ノ歌
1/2

チキン


       「 喧嘩は目的であり、手段である。 」




世界は、壊れた


限界が来ていたのだ


民主主義にも、独裁にも、平等にも、平和にも、政治にも、個人の価値観にも


戦争は起こり、飢餓も起こり、モラルは崩壊していく


その影響は日本も例外ではない。



日本も限界だった


あらゆるもの、あらゆる分野が限界だったのだ


政治や大企業に清廉潔白さを求め過ぎて、逆におかしな方に進んだ


コンプライアンスやら、ネットリンチの快感から 正義中毒は末期を迎え


誰が誰を何のために叩いているのかわからなくなっていた



教育が崩壊し、暴力が横行し始める


しかし、そんな時代にも若者はいて


若者は生きる事を強いられる…。




「なあ、龍ちゃん…やめときなって」



平和ボケと揶揄する人間も多いこの国も、治安はどんどん悪くなっていった


「あの学校はヤバイよ、ここらで一番やばい 学生同士のケンカで普通に死者まで出たらしいよ」


こんな大スクープも、今では ちょこっとテレビのニュースで紹介されるだけ


「もう決めたし、いいんだ 家から一番近い」



家から、一番近いって…アンタ…


「ウチの中学は、まだマトモ 安全だったよ 先輩が煙草吸ってるくらいでイキるレベルで」

「でも、あそこはマジでやばいよ、こういうのってあるんだ 同時期に、ヤバイ連中の巣窟が地域に生まれちゃうのって!」


「そうかな? この時代にマジメに学校に通ってるなんて 案外普通の人達なんじゃないかな?」


「違うよ! 喧嘩する為!名を上げる為に猛者が集まるような学校なの!!あそこは!!」



「うん、ありがとう シゲちゃん 3年間楽しかったよ」




「また、いつか会おう」



それが、俺が聞いた龍ちゃんの最後の言葉になった…。




「お~~~~い、チキン~~~教科書忘れたから お前の貸して~~~」



「えっ、あ いいけど」


よくない、きっとイタズラ書きされるか、グシャグシャにされて帰って来るぞ…



名前の一文字に鶏がはいってるもんだから


僕のあだ名はここでも『チキン』に決定した、名前はまだない



入学式初日で目を付けられ、既に立派なパシリにされていた


その入学式だが、卒業出来なかった先輩の一部が乱入し、乱闘騒ぎになり


延期となった



「おい!廊下で、1年が先輩に絡まれてるぞ!!2組の奴!! この前乱入して来た先輩だよ!!」


クラスに緊急速報を流してくれる有難い存在、なぜか小学校からどのクラスにも一人配備されている。



廊下はざわついていた、と、いってもみんな距離を取っている


卒業出来なかったOBの先輩はかなり怖い、身体中にタトゥーが入っている


対して、対峙しているのは 真面目そうな爽やかなイケメンだ


そうだ、彼 イケメンで初日に少し話題になってたっけ…



「別に、文句なんて ただ、今日は大人しくして欲しいなーって 最初の授業の日なんで」


「ハッキリ文句じゃねえか 1年が先輩に口出ししやがって」


「でも、先輩 退学されたんですよね? じゃあ、ただの部外者で…」



ヒュン



全部言いきる前に、先輩の拳が出た


早い、ほとんどノーモーションで的確に、イケメンの顔に吸い込まれていった


パシン 乾いた音がした



なんて事を、あんなイケメンの顔に…

ボクは心とは裏腹に、手で小さくガッツポーズをしていた


「!?」


先輩がたじろぐ


パンチは、確実に顔にクリーンヒットしている


イケメン君はガードも、避けてもいない そのまま顔で受けたのだ



だが、指がぐちゃぐちゃに曲がった先輩の手がぶら下がっていた



「なっ…」


いっきに集中力を高める、拳の痛みに怯んでいる暇はない



イケメンの顔は少し、赤く?なった程度で平然としている



退学先輩の顔つきが変わる、本気モードなのだろう



「ガッ!!!!!!」




先輩の体は少し上に浮き、そのまま吹っ飛んだ



前蹴り‥‥ただの前蹴りだ


しかし、その型は綺麗に美しく決まっていた


この瞬間に関しては、油断はしていない集中力も高め反撃に備えていた


それで防げない蹴りだったのだ



周囲の人間は何が起こったのか、わかっていない 恐ろしく早い攻防だった



「人生の先輩としては、ちゃんと敬いたいので 今日は失礼します。」



イケメンが、イケメンな爽やか台詞を残し立ち去る、というかクラスに戻っていった



こっわ、あんな人が同年代にいるのか



野次馬たちは解散していく、先生が来て 先輩を連れて行った



そうだ、授業の準備しなきゃ!

僕も足早にクラスに戻った



「(さっき、見られてたな 誰か俺の蹴りに 動きに、全部反応してた…)」



時代とは、時に運命としか言えない現象を引き起こす

稀有な才能は惹かれ合う





黒き龍と、闘鶏はこの日に出会ったのだ。



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