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それではお楽しみ下さい。
青い海、青い空、緑の山。起伏に富んだ海岸沿いに、彩を添えるようにカラフルでフォトジェニックな街並み。ボート遊びやマリンスポーツに興じる人や、砂浜でオーシャンビューを楽しむ人々。
ここは地中海に面したリゾート地だ。ここでは現地の人だけでなく、観光に訪れている人々もよく見かけ、それもまたこの街に活気という華を添える。
今は昼時で、石畳の街路に立ち並ぶ飲食店には、どこも行列が出来ていた。
「陽葵、今日は何を食べようか?」
一組の日本人観光客カップルが周りの飲食店を見ながら、今日の昼食について話をしている。
「私は何でも良いけど、なるべく並ばないとこが良いなぁ」
陽葵と呼ばれた若い女性が行列に目をやると、皆暑そうに汗を拭っていたり、パタパタと顔を扇いでいた。
「ねぇ、蓮。こっちからすごく良い匂いがしない?」
陽葵は恋人の蓮の手を引いて、自身の鼻孔をくすぐる魅惑的な香りを辿る。蓮もその香りに気付き、二人はまるで誘われるかのように歩を進める。
「こっちにもお店があるんだね。うわぁ、こっちも並んでる」
「陽葵、あそこのお店、全然並んでないよ」
メイン通りから少し逸れた通りにもカラフルな飲食店が並んでいる。そんなお洒落な街並みの一角に一軒の店があった。その店は他の店と違い、客が一人も並んでいなかった。
「しかもこの匂い、ここからしてる」
「蓮、見て見て! 日本語だよ」
二人が店の前の看板を見ると、そこには『カレー料理専門店やまと』と書かれていた。
「カレー料理専門店? 日本のカレーが食べれるかもね!」
蓮と陽葵の頭の中にはゴロゴロと大きく切られた具が入ったカレーが浮かんでいた。
「よし、今日のお昼はここにしよう!」
二人は行列が出来ていない事に一抹の不安を感じながらも、魅惑的でスパイシーな香りの誘惑には抗えず、店の扉を開いた。
中に入って見ると、店内はかなり奥行があり、奥の正面では上品な老人ディーラーがポーカーテーブルでカードを客に捌いている。そのテーブルを挟んで左右の壁際に設置されているスロットを楽しむ客達の姿が、二人の目に映る。その光景はまるでカジノのようだった。
「あ・・・・・・れ? ここは・・・・・・カジノ?」
「え? でもカレーの匂いはするよ?」