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彼女の 99+1 日  作者: 玉庭ひとり
プロローグ
1/7

001 あの日

 色鮮やかな電飾が街を彩り、浮き足立った人たちが家路や待ち合わせ場所へと急ぐ中、俺は今年も静かな山道を登っている。高校生の時に部活で何度も走って慣れた道は、陽が落ちてしまうと落ち葉を踏み締める音ばかり目立って薄気味悪さがある。


 ランニングコースを逸れて神社へ続く石畳に入る。数日後には人で溢れかえる参道は無人で、灯篭型の電灯がポツポツと薄明かりを放っているだけだ。

 手水舎の手前で立ち止まり、本殿には向かわず右に折れて林の中の小道を歩くと、立ち並ぶ五つの鳥居が見えてくる。鳥居をくぐった先には御神木らしいケヤキの大樹があるけれど、去年までは鳥居の先に進めなかった。


「・・・10 年か。」


 誰にともなく呟いてみる。振り返ってみればあっという間にも思えるが、あの時の自分は 10 年後の自分なんて想像する気も余裕も無かった。

 ただひたすら遣り場の無い喪失感と悲しみが、嘘のような現実の中で何とか俺を日常に繋ぎ止めていた。


 夜空から照らす少し欠けた月は林道に陰影を生み、サラサラと吹く冷たい風と相まって鳥居と大樹が時折妙に際立って見える。


「10 年、か。よし・・・。」


 意を決して、目を閉じたまま願いを込めながら鳥居を一つ一つくぐって行く。

 もう一度彼女に合わせて下さい。

 もう一度彼女の笑顔を見せて下さい。

 もう一度、彼女と・・・。



 鳥居五つ分の距離を歩き終え、目は閉じたままにも関わらず大樹の気配を目の前に感じる。

 記憶の奥底で色褪せつつも忘れられない彼女の表情を瞼の裏に思い浮かべると、10 年も前の衝動が再び沸き起こる感覚が押し寄せて目頭が熱くなった。


「井瀬さん・・・。」


 込み上げた涙が収まるまで数秒。不意に頬を暖かな風が撫でたような気がして、俺はそっと目を開けた───


 ゆるっと書いてます。

 よろしくお願いします。

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