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期間限定 数量限定  作者: 喜多 無来舞沙
第1章
9/24

ピロートーク

「俺は松の無人島に行きたいんだ。」

ホテル【ゴルード】にカツラをかぶった男と泊まるのは気が引けるがしょうがない。下手に出歩いてアイツらに見つかる事を考えると、中村と部屋で大人しくしている方が良いだろう。相変わらず中村は訳の分からない事を言っている。しょうがない、相手をしてやるか。

「半年もあるんだぞ、素人の俺たち2人で乗り切れるわけないだろ。行くのは梅だ。」

「感じたいんだ、生きてるって実感を。」

「安心してくれ、君は今間違いなく生きてる。俺が保証する。」

「君の保証なんて、通販の全額返金の保証ぐらいの信頼度だろ。」

「そんなに低いわけないだろ。プロ野球選手が、手術を怖がる子供とのホームランの約束を見事に果たして、無事助かるぐらいの信頼度はある。」

「高いか低いか、いまいちわからない。」

「何故わざわざ大変な方を選ぶのか理解できない。社長と違って、俺たちは遊びじゃ無いんだ。アイツらから半年間逃げるっていう目的があるんだ。」

「大変だと分かっていても選ばないと行けない時がある。例えば凄い美人でとても相手にしてもらえるとは思えない女性と、そんなに美人では無いけど、自分に好意を持っているであろう女性。どっちを口説く?」

「自分に好意を持っている女性。」

「だろうな。じゃあ、ずっとやってみたかった仕事だが、給料は安くてしんどい仕事と、全然興味は無い仕事だが楽して儲かる。どっちに就職する?」

「楽して儲かる。」

「そりゃそうだ。じゃあ、高い壁に登るか、低い壁に登るか、どっちだ?」

「君は一体何を聞きたいんだ?」

「とにかく楽な方ばかり選んでいては駄目だと言いたいんだ。」

「言いたいなら言えば良いさ、止めはしない。」

以前行った時は1週間だった。今度は半年だ。それに社長もずっと一緒という訳にはいかない。仕事があるし夏季休暇が終われば帰るだろう。中村と2人で半年間無人島で自給自足、不安の極みではあるが、まあ何とかなるか。

「じゃこれならどうだ?胸毛が1日5センチ伸びるか、脇毛が1日5センチ伸びるか、どっちだ?」

「主旨が変わってるだろ。訳のわからない事ばかり言ってないで、明日出発なんだぞ。必要なものを準備しないと。」

「必要なものはもう揃ってる。」

「なんだよ?」

「気合、根性、諦めない気持ち。」

「運動部の部室の標語か?そんな精神論でサバイバルは生き残れない。」

「いいや、社長も言っていた。絶対生きるっていう強い気持ちが生命力を強くするって。」

「そんな事言ってたか?とにかく明日、出発前に買い出しに行くから、それまでに必要な物を考えてくれよ。」

「だから日焼け止めクリーム。」

「半年も塗り続けるのか?バケツの日焼け止めクリームなんて売ってないぞ。」

「日光が苦手なんだ。」

「美肌女子か?」

よく見れば、色白というより不健康な白さだな。

「半年分は無理だが買っておくよ。今日は一日にとんでもない事が起こり過ぎた。まだ自分の身に何が起こっているのか整理出来ていない。疲れたから寝る。」

あれこれ考えたって仕方ない。目の前の問題を1つずつ最善を尽くして解決していくしか無い。きっと上手く行く、ような気がする。

「寝ようとしているところを悪いんだが、どうしても君には謝っておきたくて。」

「俺の眠りを妨げてまで何を謝りたいって言うんだ?」

「君を巻き込んでしまって悪いと思っているんだ。」

「本当に悪いと思っているのか?」

「ああ、思っている。」

「心の底から?」

「んー、底のちょっと上ぐらいから、かな。」

「嘘でも底からって言えよ。」

「相棒には正直でいたいんだ。」

「今日初めて会った俺たちのどこに相棒になる要素があったんだ?」

「今朝のテレビでやってた星座占いが良いパートナーに巡り合うでしょう、だった。」

「朝のニュース番組の終わりにトラの着ぐるみが出て来て占うコーナーだろ。俺も見てた。俺と一緒じゃないか、4月生まれ、おひつじ座」

「いや、5月生まれだけど。」

「おうし座じゃないか。トラブルは解決しないでしょうって言ってたぞ。どうやったら間違えられるんだ?最悪じゃないか。」

「おひつじ座寄りのおうし座だから大丈夫だ。」

「なら安心して眠れるよ。」

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