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神kami-kaze風

作者: 後藤章倫

元の皇帝フビライは暇をこいていた。


「マジで暇だ、暇だからちょっとアレしとこうかなぁ」

そんな独り言を言いながら部下を呼びつけた。

「あそこあんじゃん?ジパングだっけ?あの小さな国、あそこに行ってさ朝貢しろっつってきて」


朝貢とは、皇帝に対して周辺諸国(君主)が貢物を献上し、皇帝側は恩恵として返礼品をもたせて帰国させることで、要は手土産持って挨拶に来さらせボケが!という事である。


そういう訳で元の遣いが幕府へやって来て皇帝フビライの意思を伝えた。すると、

「何勝手な事言うとるのよ?アッハーン?そんな事するわけないじゃん?帰れスカポンタン」そう言って幕府は遣いの者を瞬殺した。そして鹿十した。


したらどうなったかと言うと、フビライ=ハンが激怒した。つーことで、文永十一年に元と高麗の連合軍を九州へ向かわせた。その数なんと三万人。大船を仕立てて押し寄せてきた。

幕府は「マジか?」と思った。思っただけでは駄目なんで九州方面の御家人を総動員し迎撃体制に入った。

しかし元と高麗の連合軍は集団戦法に優れ、更に火薬を使った飛び道具なども用い幕府軍を攻め立てていた。


三年寝太郎は寝てた。

眠りに入ったのは丁度三年前だったので段々起きそうだった。

「ふぁ~なんだか海の方がうるさいなぁ~」

そう寝惚けながら三年寝太郎は起床した。寝太郎は起きてシッコを垂れた。シッコを垂れながら海を見ると戦いの最中だった。

見慣れない感じの船が攻めて来ていた。防戦一方なのは幕府軍だ。

「あららら、やべーじゃん幕府軍押されてんじゃん」

シッコを終えた寝太郎は地面にどしりと胡座をかいて座り込んだ。目を閉じ大地と一体化を図った。すると空の雲行きが妖しくなってきた。雨雲と雷雲が立ち込め風が強くなってきた。寝太郎が猛獣の様な雄叫びをあげる。

「ぐぅおおおおおおおおお!!!!!」

そしてカッと目を見開くと嵐が起こった。


嵐により元と高麗の連合軍は撃沈し幕府軍は勝利した。

寝太郎はひと息ついた。寝太郎は角力が好きなので何となく角力を取りたくなった。そこいらの猿や猪なんかと角力を取って遊んだ。結構、崖ギリギリのところで角力をやっていたので、小手投げした猪が崖から落ちて絶命した。寝太郎は運動して腹が減ったのでその猪でぼたん鍋を作って食べた。

ぼたん鍋は旨かった。超絶旨かった。腹一杯になった。腹一杯になって眠くなって寝た。

こうして文永の役は納まったのだった。次に寝太郎が目を覚ますのは三年後のはずだった。


寝太郎が目を覚ましたのは次の日だった。寝太郎は激しく下痢を催してた。

ブリブリブリブリ、メリメリメリメリとユルいブツを放出しまくっていると猿が数匹、阿呆面下げて寝太郎を見ていた。

「あっち行け猿」

そう言った途端に第二波が寝太郎の腹を襲った。ドリドリドリドリと変な音を伴いながら放出し、一旦ブツが途切れるとブオオオオオオンというこれまた面白い音を響かせて屁をこいた。

結果、寝太郎は下痢に悩まされようやく眠りに就いた頃には文永の役から一年が経っていた。


それから三年後、寝太郎は起床し、シッコを垂れたり角力を取ったり、ぼたん鍋を食べたりして過ごしたが特に何も変わった事はなく普通にまた眠りに就いた。

弘安四年、つまり寝太郎が眠ってから丁度三年後に事が動いた。

あの荒くれ者達、元の軍がブイブイいわせていた。

「もうアレよ、俺達を止められる奴なんか居ねぇ、俺達はブレーキの壊れたダンプカーだぜ」

そんな事を口々にしながら南宋に攻めいっていた。はっきり言って全員ラリっているみたいだった。

この元の軍は余裕で南宋を滅ぼした。もう彼らを止められるものは居ないくらい勢いに乗っていた。そしてその勢いのまま日本に舵をとった。

「行くぜジパング。あん時ぁなんか知らんけど急に嵐になって負けたみたいになったけど、俺らぁアレだ!最強やし」

となって博多湾に攻め入って来た。その数、朝鮮半島から四万、中国南部から十万の合わせて十四万人の途方もない規模の大軍だった。

「なんかヤバいよね?」

そう思った幕府ではあったけど、色々と過去からの教訓を学んでいたので異国警固番役を定め、博多湾に石造りの防塁を築くなど万全の体制を構えていた。元軍の集団戦法なんかも研究していたので日本武士団は下船を許さず、波打ち際で食い止めていた。

すると前の方の船が進めずにアタフタしてて十四万からなる船団は博多湾で大渋滞を起こしていた。

「ゴラ」

「なにやっとんじゃ?」

「進めよボケっ」

「押すなボンクラ」

そんな怒号が博多湾に溢れていた。


海の方の騒ぎで三年寝太郎が起床した。

「うるさいなぁ」

そう言いながら海が見える小高い丘からシッコした。ジョビジョバジョビジョバ放尿しながら海を見るとまた見慣れない異国の船が攻め入ってきていた。

「また来たの?つか数ヤバくない?えぐっ」

寝太郎は軽く放屁し胡座をかいた。

「さてと」

そう言うと寝太郎は目を瞑った。心を鎮め息を整えた。大地と一体化した寝太郎は完全に風景の一部と化していて自然の流れで両腕を天に掲げた。空はまた妖しく曇り雷雲と雨雲が博多湾を覆った。

空を見上げた幕府軍は武士同士が顔を見合せニヤリとした。元の軍の者達は、

「え?マジで?」

と絶望した。文永の役とは比べ物にならないくらいの嵐が十四万の軍をのみ込んだ。

こうして弘安の役もおさまったのだった。


幕府の中だけではなく、一般の人々も二度に渡って元の襲撃を回避させた嵐の事を神風が吹いたと騒ぎたてた。また元の方でも神風の事は語られたのだけど、実際には三年寝太郎の妖力によって起こされた嵐であった事を知るものは少ない。

その数少ないもの達である猿や猪と共に寝太郎は今日も角力をとっている。



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