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久遠の海へー再び陽が昇るときー  作者: koto
プロローグ マッカーサーの憂鬱
1/24

1-1

本書は前作「久遠の海へ 最期の戦線」の続編となっております。


前作をご覧いただけると、より一層理解度が進むと思われますので、ぜひご覧ください。

 第2次世界大戦の勝者は誰だったのか。マッカーサーは皇居を見渡せる第一生命館の一室から、先の戦争を俯瞰する。ここ第一生命館にはGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が置かれ、ここで日本の将来が日本人抜きで決められていくのだ。

 今や連合国軍最高司令官の座に就いた彼は、軍政下にある日本の頂点に立つ人物である。彼の決定は日本政府の総意よりも重い。

 戦勝者のみに与えられる、他国民の命を支配するという権限を有する人物は、いくら世界広しと言えど限られるだろう。そして、彼はその一人だ。

 そのような至高の一時を過ごすマッカーサーは、しかし、アメリカが今次大戦の勝者であると断言することは出来なかった。


 ――第2次大戦の勝者。それは日本を挑発し、真珠湾の愛国者たちを犠牲にしたことで、世界3位の強大な日本海軍を滅ぼせた我が国であろうか。

 これは正しくもあり、また間違いでもある。

 この戦争は枢軸陣営の降伏により終了することとなった。連合国陣営の一員であったアメリカは間違いなく勝者である。特に、欧州各国が自国で戦争を行った一方、アメリカ本土は無傷そのものだ。今後の経済の中心地となることに疑いようはない。

 もちろん、この戦争で多くの将兵を失ったが、損失といえばそのような人的資源のみであった。太平洋の島々と沖縄を手に入れることができたのだから、大いに犠牲分は取り返したと言えよう。


 ――本当にそうだろうか?

 マッカーサーは、一方でアメリカが戦勝国ではないと言える根拠も持ち合わせていた。

 その最たるものが、“日本を滅ぼすことによって、アメリカの安全は保障されるのだろうか”という命題だ。

戦前の時点で、アメリカは産業力・技術力・軍事力の全てで日本より優位にあった。いくら帝国海軍が世界有数といえど、米本土への侵攻は確実に阻止できたであろう。

 そして、もう一つの根拠が、戦後日本を管理する費用であった。

 日本はまず資源がない。自国で自国民を生かせるだけの食料でさえ不足しているのだ。

 では工業力はどうか。航空機、造船業など重工業の一部を除き、大部分が劣っている。そもそも、その一部でさえ海外から資源を輸入しなければ話にならない。

 ――ホワイトハウスは日本を農業国家にするらしい。ばかばかしい事だ。少しは日本の大地を自分の足で踏んでみろ。緑豊かな山々を視界に入れない日は無いというのに

 日本は平地が少なく、山岳が多い国だ。農地となる土地そのものが限られている。面積だけを見てアジアの他の農業国と比較するのは愚の骨頂だ。

 

 そして、マッカーサーを悩ます事象が、ソ連による北海道北部の占領だった。

 戦後、北海道の一部はソ連が軍政かに置かれている。具体的に言うと、地図上で留萌から釧路に引いたラインの以北のことだ。そして、その国境を同じ戦勝国である米ソ両国が自らの軍組織を派兵し、相互に監視しているのだ。

朝鮮半島の約210キロと比べて、留萌―釧路ラインは約245キロだ。東京と名古屋の直線距離が約265キロなのだから、その長大さを理解できるだろう。

 この国境への派兵は米国にとっては負債でしかない。一刻も早く日本に国境警備部隊を創設すべきなのだが、農業国家にする方針なのだから、それを維持できるほどの経済力でさえ無くすつもりだ。この管理費はこれからもアメリカに負債として残り続けるだろう。


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