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あくまでも英雄には成れない奴なんですか?。   作者: 清涼
第一章 転生勇者に言い寄られた姫を勇者から守る依頼。
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初めての

「あー、美しい、君のことが堪らなく好きなんだ。僕たちと結婚してくれないか」


私はその一言に困惑した。


辺りは暗く、星空が美しく輝いているなかで

目の前に立っているのは、この国の勇者である田中飛鳥。

黒髪の短髪で、背は低く、足が短い。

のっぺりとした顔立ち。


そんな彼の後ろにいるのは2人勇者の伴侶。

彼の左腕に抱きついているのは可愛らしく、胸の主張が激しい獣人の少女。


その反対の腕に抱きついているのは、腰まで伸びた金髪、くっきりとした顔立ちの美人なエルフ。


勇者であるということ以外なんの取り柄もない彼に、どうやら私は口説かれているらしい。


私は彼のことが好きではない。女たらしでロリコン。かっこよくないナルシスト。そんな彼を好きと言う人は財産が目当てなのに違いない。


こういう時、はっきりと断ったはほうが向こうもこっちの気持ちを理解してくれるはず。

でも、彼はこの国の勇者。

もし、断ってこの国に協力してくれなくなってしまったらと考えると断りづらい。


「僕のところに来てくれたら、何でも好きなものあげるよ」


なかなか喋りださない私に彼はそう言ってくれた。


「わかった。キシトールの杖を私にプレゼントしてくれたら、結婚してあげる」

反射的に口に出てしまった。


「約束だからね、必ずその杖を見つけて来るよ」


彼は意気揚々と彼女たちを連れ、帰っていった。



キシトールの杖。それは1000年ほど前伝説の英雄キシトールが使っていたとされる杖。

その杖を使えば、死者を蘇らせることが出来るという伝承がある。

あくまでも、伝承。キシトールが存在していたという正確な記録はない。


勇者、田中飛鳥は異世界から召還されてきた人間。

そんな事知らないのだろう。


杖が見つかることなんてあるわけがない。

私は家路へと着いた。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「スクマくん起きなさい、朝食の時間だよ」

俺は宿屋の女将に起こされ、瞼を開けた。体を起こし。

すぐに着替え、荷物を持ち、寝床のある二階から宿泊者が食事を取るスペースがある一階へと階段で降りて行った。


朝食のパンと芋のスープを急いで口の中へ入れ、慌ただしく宿屋を出た。


今日はエーテル王国の名門学院であるエーテル魔法学院を卒業し、採用された就職先の初めての出勤日。

不安と期待を胸に朝の王都の道を歩いている。


宿から徒歩3分。白い三階建ての建物の一番上の階にあるフクノリ相談所。依頼主から依頼を受けそれを解決する会社。

ここが俺の職場となる場所。


俺は階段を上がり、三階の扉をドキドキしながらゆっくりと開いた。


「あの、失礼します、今日からお世話になりますスクマと申します。お願いします」

緊張する。心臓がドクドクする。


「君が新入りの子だね、こっちへ来なさい」


白髪が肩まで伸び、顔には多くのシワが刻まれ、貫禄を感じさせる佇まいの男が目の前にに立っていた。


「あの部屋に入って」


彼は人差し指でドアを指し、どこかえ行ってしまった。

彼が指した部屋へと向かう。


「失礼します」


ドアを開け中に入る。


目の前に

紅い瞳。目鼻がくっきりとしていて、クールな顔立ち。すらりとした細身。赤い髪が腰まで伸びている女性が大きな椅子に座っていた。


「君がスクマか、私の名前はエリサだ」


「よろしくお願いします」


俺は頭を下げた。


「頭を上げろ、この会社は人手が不足している。新入りだが、すぐに働いてもらうことになる、分かったな」


「分かりました、頑張ります」


「なら、着いてこい」


俺はエリサさんとともに職場を出た。


「今から行くのはダリイにある依頼主、ペンリルの家だ」


ダリイは王都の隣の隣の町の村のひとつ。

そんな遠いところまで行くのか。


俺とエリサさんは王都の中心にあるロテル駅へ向かい。

魔法鉄道の汽車へ乗り、ダリイへと向かった。


「お弁当、サンドイッチ、パン、飲み物はいかがですか」


黒い短いスカートに青いエプロンをした売り子が車内を巡回っている。

セクシーだ。


「コーヒーを2つ」


エリサさんが財布から小銭を取り出し、コーヒーと小銭を交換した。


「お前も飲め、着くまでに時間がかかる」


「ありがとうございます」


エリサさんの好意に甘え、コーヒーをいただく。





汽車に乗り始め2時間。ようやくダリイに着いた。

駅の隣の大きな家に俺とエリサさんは向かう。


家に着き、ドアをノックする


「フクノリ相談所の者ですが、ペンリルさんはいらっしゃいますか」


ドアが開く


「中に入ってくれ」


短い金髪に凛々しそうな顔。

背が高く、高そうな服を纏っている。


彼に進められ中へと入り、席へと着く。


「お茶でも飲みますか?」


「いや、結構です。依頼の話をお願いします。」


エリサがペンリルを止め話を進めようとする。


「実はですね、私はキシトール伝説の研究をしていまして、遂にキシトールの手記らしきものを発見したのですが、さっぱり分からなくて」


キシトール伝説はこの国の有名な童話で、英雄キシトールが、世界を脅威から救う話。俺は小さい頃から祖父によく、聞かされていた。


「その手記には、王都の外れの塔と呼ばれる場所には、キシトールに関する何かがあるらしい。それを探して持ってきてくれないか?」


キシトールの研究者が分からなかったことが分かるわけがない。

エリサはこの依頼をどうする。


「分かりました、成功報酬は1100万メルクで如何でしょうか」


エリサさんが金額を提示する。法外な金額だ。この国の平均賃金の約11倍だ。


「分かりました、その代わりルールは守って下さいね」


ペンリルがエリサさんの提示を認めた。


「成功報酬1100万メルクフクノリルールで契約でいいんだな」


「もちろん」


ペンリルは頷く


“契約”


エリサさんは契約魔法を使う。


そもそもフクノリルールってなんだ。


「帰るぞ」


俺とエリサさんはペンリルの家を出た。


「その、ルールって何ですか」


俺はエリサさんに聞いてみた。


「失敗したら成功報酬の2倍を支払う、わが社のルールだ」


もし、失敗したら大変なことになるのでは…

しかし、エリサさんの顔は少し笑みを帯びていた。


「安心しろ、スクマ。ペンリルは期限を設定しなかった、つまり言い逃れは出来るってことだ」


それはただの屁理屈じゃないか。


「スクマ、このまま直帰でいい。私は少し用がある。切符代は後で総務へ請求してくれ」


「それではお疲れさまでした」


エリサさんへ頭を下げる。


エリサさんは町の方へと向かっていった。


感想、ブックマークよろしくお願いいたします。

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