御成敗式目
短編故に一話完結
山岡金次郎は途方に暮れていた。彼はいままで敗北を知らない人生を歩んでいた。エリイトの家に生まれエリイトの高校を卒業。さらにエリイトの大学を卒業している。彼のエリイトさは留まるところを知らなかった。そう、今日この日までは。
魔が差したのだ。魔が差してブラックジャックに深く金を投じてしまった。彼には妻子がいるし家内にはあなたはすぐ熱くなるのだから、ギヤンブルは向いていないのではないかと言われ、頭に血が上りながら反論した。山岡金次郎に向いていないものがあるというのか。私はエリイトなのだぞ?貴様は僻地長崎で生まれた百姓の子だが私は違う。そう言い放って有り金をすべてマジックテエプの財布に詰め込み単身アメリカ・ラスベガスへと渡った。妻子は難しい顔をして彼に三本のきなこ棒を持たせてくれた。有給は1ヶ月取った。
たしかに彼は幸運であった。彼の乗る飛行機が一便遅れていたらテロに巻き込まれていた。その上飛行機内で飲んだお茶をみると茶柱立ちまくりである。私はツイている。僻地に生まれた田舎娘である家内を見返せる。ラスベガスで阿呆ほど金を稼ぎちらし小洒落たスウツに身を包み家内を肝を抜いてやろう。金次郎は今後の惨状を知るよしは無かった。
ラスベガスの地に足を踏み入れ、まず彼はトイレを探した。催したのである。
しかしトイレがどこにもない。彼は一刻もはやく尿意から逃れたかった。彼の顔は段々と青白くなっていく。
今日は2008年9月13日。リーマン・ショックまであと2日である。
短編だけど続く