予言
『残虐皇帝と予言の王女』連載版です。
短編バージョンと多少設定が異なるところもあります。
今回はプロローグなので、続けて1話目にあたる部分も投稿することにします。
『この子は、父親を滅ぼすだろう』
ロワリエ王に第2王女が生まれた。ロワリエ王が王妃であるダリモア王国の王女に産ませた子であった。母親に似たこの女児には、一つの予言が下された。
『この子は、父親を滅ぼすだろう』。
親殺しの予言である。いや、『滅ぼす』と言う以上、殺すとは限らない。しかし、この女児が父親の地位を脅かすであろうことは確かだ。
当然、ロワリエ王はこの女児が本当に自分を滅ぼしに来ることを恐れた。現在では少なくなっているが、予言者は本当にいて、その予言は外れないと言われていた。ロワリエ王室に仕えていたその予言者は、その予言を王に伝えたことで殺され、女児とその母親は、殺されることはなかったものの、辺境の修道院に閉じ込められることとなった。
それから19年。唐突に、予言を受けた女児――今は娘と言った方が正しいだろう――は修道院を出ることになった。嫁ぎ先が決まったのである。修道院に入った娘が還俗し、嫁入りする前例は、ないわけではないがめったにない。
そもそも、その娘は修道女ではなかったため、還俗、と言う言葉はおかしいかもしれない。彼女は修道院に所属する研究者と言う立ち位置だった。
その娘――第2王女の嫁ぎ先は、ハインツェル帝国。
残虐皇帝と呼ばれる皇帝が治める国だった。
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