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全てを…

ー棗sideー

「あーあ、本当なんであいつが隣なの!?」

授業が終わり私は佳穂と一緒に教室で弁当を食べていた。

授業中は私ずっと窓の外を見たまま、ミジンコは貧乏ゆすりをしながら肘をついていた。

「授業態度が悪い」と先生に一緒に怒られてしまったがミジンコを見ないよりはマシだった。

「まぁまぁ。棗も要くんも意地を張り過ぎだよ。早く謝っちゃったら?」

「いやだよ!私、悪くないもん!」

なんで私があいつに謝らなきゃならないかわからない。どう考えたってミジンコの方が悪いに決まってる。

「佳穂さん」

私がミジンコの愚痴を言っていると友樹くんが来た。

「あっ、友樹くん!なぁに?」

佳穂はびっくりした様子で、でも頬を赤らめながら返事をした。

「これなんだけどね…」

二人は楽しそうに話し始めた。

正直言ってこの風景は好きではない。

好きな人が楽しそうに異性と話しているから。

でも、もう私は少し諦めつつある。

叶わない恋をしたって自分が傷つくだけ。

佳穂が困るだけなんだから。

だから、友達で…親友でずっと居たいと思っている。

でも、だけど佳穂すっかりを諦められない自分が憎い。

なんで同性を好きになってしまったんだろう…

どうして佳穂なんだろう…

疑問や不安、怒りが込み上げてくる。

でも、誰にも相談できない。

同性が好きになったなんて聞いたら引くだろう。

私がそう聞いたらきっと引いてしまう。

私がもんもん悩んでいると話が終わったらしい佳穂が心配そうに顔を傾けていた。

「どうしたの?棗…眉間にしわが寄ってるよ?」

「えっ!?あっ、ううん。なんでもないよ!」

私が慌ててそう言うと佳穂は少し悲しそうに「そっか」と弁当を食べ始めた。

どうして佳穂が悲しそうにしているかわからない。

それから私たちは少し気まずい雰囲気で昼休みを過ごした。



五時間目が理科だったので実験室で授業を受けた。

実験室の片付けとして授業態度が悪かった私とミジンコが選ばれてしまった。

私はミジンコと二人きりで片付けをしていた。

このまま無言で終わらせようと思っていたが、突然ミジンコが「おい」と話しかけてきた。

私は返事をするもんかと無視をしていた。

だがミジンコはずっと「おい」と言ってくる。

私は我慢ができなくなり返事をしてしまった。振り向かずに。

「何よ!?うるさいわね!」

「あっ、やっと返事した」

ミジンコはなぜか少し嬉しそうな声だった。

「なぁ、お前と川谷ってそんなもんなの?」

「はぁ?」

ミジンコの言っていることがわからず振り向いた。

するとミジンコは真剣な顔でこちらを見ていた。

そのあまりにも真剣な顔に少し戸惑った。

「友達ってさ…親友ってなんでも言い合うもんじゃねぇーの?」

「そうだと思うけど…」

「だけどさ。俺が見ている限りお前たちって隠し事ばっかしてるような気がすんだけど」

「そんなこと…!」

私は「そんなことない」と言おうとした。

けど、ミジンコの真剣な眼差しに言葉が詰まった。

「そんな…だって、人には隠し事…一つや二つはあるもん!」

私は勢い任せに言い放った。

「へぇー。でもさ、なんでも言い合って、一緒に泣いて、一緒に悩んで。それが友達だろ?喧嘩もするかもしれない。でも、喧嘩するほど仲が良いんじゃねぇーか?」

「…!」

私はミジンコの言うことに反論できなかった。

だって、当たってるから。

私は気づくとしゃがんで顔を下に向いたまま話していた。

「私…変だから…佳穂を好きになってた…恋をしていた…自分でもダメだってわかってた…でも、でも…」

「気持ちは抑えられなかった…」

気づくとミジンコは私のそばにしゃがんでいた。

「うん…こんなこと佳穂に言ったら嫌われちゃう…友達で居てくれなくなっちゃう…だから、いつも私…怖い顔してた。心配させるような顔してた…佳穂には幸せになってほしい…だから、だから私は諦めなきゃいけないの…」

だって、佳穂には友樹くんがいるから…

話終わると頭に優しい感触がした。

きっとミジンコが…要が頭を撫でてるんだ。

私は嫌じゃなかった。

全部を話してスッキリした。

要が静かに抱き寄せてくれた。

私は要の胸元で泣いた。

泣いて泣いて…

要の制服が濡れていった。

でも要はずっと静かに抱き寄せてくれていた。

(ああ、要っていいやつだな…)

私は泣きながら思っていた。




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