隣の席は…
ー棗sideー
私と佳穂は同じクラスになった。心から嬉しかった。でも…
「あっ…!」
「お前…!」
あの、要って奴と友樹くんも同じクラスだった。それだけじゃないんだ…
「あっ、あの…私、河谷佳穂っていいますぅ…その、よろしくお願いします…」
「あっ、うん。僕、狩屋友樹っていうんだ!…その、仲良くしような?」
佳穂と友樹くんが隣の席になってたんだ。私は佳穂とは離れちゃった…
私はしょぼんとしながら自分の席に着いた。
(一応隣の席の人に挨拶をしなきゃいけないよね?)
「哀川棗です…よろしくね」
私は隣の席の人にできるだけ笑顔で言った。
すると隣の人は「あっ…俺は…」と言ったところで止まった。
なぜかと思い顔を上げると私も同じように固まった。
だって、そこにいたのは…
「蘭堂要…はぁ…なんで俺はこんなに運が悪いんだ…」
そう、あの要!
「私もよ!ほんとなんなの!?あんた!」
「俺が知りたいぜ!」
「授業中話しかけないでよ!?」
「ああ、心配せずとも見たりともしねぇよ!」
ふん!っと私たちは顔を背けた。
すると、佳穂が私の席に来た。友樹くんと一緒に。
「あーあ、佳穂が隣だったらな!毎日楽しいのにな!」
私はわざと大きな声で言った。
「それはこっちのセリフだ!友樹が隣だったらな!こんなクソ女より断然いいのに!」
私は「クソ女」というフレーズにカチンッときた。
私はガタンッと立ち上がって要を睨みつけた。
「『クソ女』ですって!?だったらあんたは『ミジンコ』よ!」
すると要は…いや、ミジンコは勢い良く立ち上がって私を睨みつけた。
「『ミジンコ』だと!?だからお前はクソ女なんだよ!」
「ミジンコ!」
「クソ女!」
私たちはお互い睨みあった。
佳穂や友樹くんが何か言ってるけど聞き入れない。
クラスのみんなが私たちに注目してるのはわかっていた。
少し恥ずかしかったけどそれ以上にミジンコに腹が立っていた。
〈キーンコーンカーンコーン〉
チャイムが鳴り先生が教室に入ってきた。
「入学式の前にいろいろと説明するぞーってなにやってるんだお前らは」
先生は呆れた顔で私たちを見た。
「先生!席を変えてください!」
「こんな奴と隣なんて嫌なんだ!」
私たちは先生に詰め寄った。
先生は私たちの殺気に負けたのか「まぁ、待て」と手で制した。
「入学式が終わったら席替えをしようと思っているから、な?」
私たちは「それなら…いいですけど」と渋々席に着いた。
入学式が終わり待ちに待った席替えの時間だ。
私は全部の力や運やらをそれにつぎ込んだ。
「おりゃーーぁああ!」
私はくじを引き、その番号を見た。
(16番か)
私は16番の席を見た。そこは窓際の一番後ろだった。
ラッキーと思いそこに行こうとして足が止まった。
隣の15番の席にあいつが座っていた。
「先生!引き直させてください!」
「はぁ?なに言っているんだ。引き直しは無しに決まっているだろう」
私はイライラを押し殺して諦めてその席に座った。
するとクラスがざわざわしだした。
「おい、いいのかよ。あいつら一緒にして」
「とことんついてないね」
「このクラスの名物になるのかもね」
私が立ち上がって何か言おうとしたらミジンコがバンッと机を叩いて立ち上がった。
「蘭堂くん、机を叩…」
先生が注意するのも無視しミジンコは教室を出て行った。
「どうなっちゃうのかな…」
佳穂がなぜか悲しそうに呟いた。