第一話「芽生える恋心」
ー棗sideー
私はみんなと少し違う。恋する相手が違うんだ…
みんなは異性を好きになるよね?でも、私は…
少し開いたカーテンからこぼれる朝日に照らされて少し明るい部屋。ここは私の部屋。
私は自分の部屋を見回してにんまりとした。そこには好きなアニメのキャラクターグッズがずらりと並んでいた。
「上出来!」
私はくるりとドアを見つめてまたにんまり。そこには大好きなアニメのキャラクターポスターがデカデカと貼ってあった。
「最高!今日も行ってくるね!かなめ様!」
私は飛び出すようにして家を出た。今日から中学生になる私は実はもう一人暮らしをしている。なんでかは言えないけどね。
カーブが見えてきて私はふと上を見上げた。透き通るように真っ青な空。それに負けずとある少ないふわふわ雲。キラキラと輝く太陽。横を見ると満開の桜。
私は太陽に手をかざして見た。
(流石に透けないか)
少し残念そうにしたのも一転、突然その人は現れた。
「っと!」
少し飛んだような声がした方向を見るとそこには一人の女子がいた。制服から見るに私と同じ学校らしい。
「花びらついてたよ?」
そう言って彼女は一枚の花びらを差し出した。透き通るような真っ白い肌の小顔に対するようにある長い黒髪。
私はその時思ったんだ。
ーー運命の人に出会えたとーー
「あっ、ありがとう…ございます…」
私は小さい声で呟いた。相手に聞こえないかな?
すると、彼女はにっこりして「どういたしまして」と言ってくれた。聞こえていたみたいだ。
「あなた青藍中だよね?もしかして一年生?」
「あっ、はい!今日入学する哀川棗です!」
「タメでいいよ?私も一年生だし。私は河谷佳穂。よろしくね!」
そう言うと佳穂は手を差し出してきた。握手を求めているようだ。
私は少し震えながらもその手を握り返した。
「どうしたの?震えてるけど…」
「えっ!?あっ、何でもないですよ!」
「タメ」
「あっ!はっ…じゃなくて、うん!本当になんでもないよ」
すると佳穂は微笑みながら「そう。よかった」と胸を撫で下ろしてくれた。
私は美しい佳穂に見惚れていた。
(こんなに優しくて可愛い人初めて…)
胸がドキドキするのがわかった。そしてやっと気づいたんだ。
私が佳穂のこと好きだって…
ー要sideー
俺は小学生の頃からの親友、友樹と今年入学する中学校に向かっていた。桜が満開だ。
俺が綺麗だなと見惚れていると友樹が肩を組んできた。
「なぁ〜に、桜を見つめてるんだよ!もしかしてあいつのことか?」
友樹が言う『あいつ』というのは俺の妹、桜子のことだった。
「そういえば、桜子が事故にあった時も桜が満開だったな…」
桜子は三年前のこの頃事故に遭い今だに眠ったままだ。いつ目を覚ますかも全くわからない。桜子も友樹が好きだった。『も』って不思議に思うか?俺も友樹が好きだ。親友じゃなくてね。俺はこの気持ちに嘘をつこうとは思わない。
友樹は俺が黙ったのを心配したのか組んだ肩を離して頭をクシャクシャと撫でてきた。
「なっ、何すんだよ!」
「元気だせって!桜子は絶対目を覚ます。お前が信じてやらなくちゃいけないんだからな!」
友樹はにっこりとして頭から手を離してくれた。
嗚呼、俺は友樹のそういうとこが好きなんだよ。
「嗚呼、そうだな。」
俺はにかっとして言った。
そして俺は先まで少し走って言った。
「後に着いた方のおごりな!」
「あっ!おい、待てよ!ずりーぞ!」
俺たちは学校に向かって走り出した。