第4話
「フィッ、フィリア―――――――!?」
どこから湧き出たのか、ライラが叫びながら闘技場に走り入ってきてフィリアへタックルをかました。
「くふっ」
まともに食らったフィリアは息を吐き出して、キューと目を回す。
「だ、だだだだ大丈夫!?け、怪我はっ!?なんで生徒会長となぐり合いしてるの!?」
ちょっと目を離したすきにこれですか!?とライラは悲鳴をあげた。
「クレイクのせいで痛い」
一番ダメージ負った。とフィリアはライラへ訴える。
「ごごごごめん!」
あわててライラはフィリアから離れて謝罪する。
「なんだ、いるじゃないか」
「コレじゃない」
「友達、だろ」
「コレ、違う。絶対」
土下座をかましそうな勢いで謝っているライラに、なんか違う、とフィリアはライへ告げる。
「なんで片言なんだ。あいつといるときはもっと饒舌だろ」
「あ、あれは、別」
頬を赤く染めると、フィリアはライから視線をそらす。
「かわいい!フィリア、かわいい!!」
「うるさい」
ライラは瞳を輝かせて、フィリアの手を握る。
ぷいっとフィリアは顔をそむける。
制服についた土煙を払っていたライは、2人の様子を見て、微笑みを浮かべる。
「フィリア、そいつととりあえず組めばいいと思う。大丈夫、裏切られるようなことがあったら言え。俺が殺す」
次いで真顔を作り、彼はフィリアへ提案するのだった。
彼の言葉にライラは内心で悲鳴を上げ、フィリアへ一層くっつこうとする。
「物騒」
「言うな。気づいてるから」
「…ありが、と」
「いつものことだ」
いいストレス発散になった。付き合い感謝する、とライは闘技場から立ち去るのだった。
「あ、昼ごはん食べ損ねたっ!?」
ライラは衝撃の事実に気付いて悲鳴を上げた。食べる気満々だったライラが食べていないことにフィリアはクエスチョンマークを頭上に浮かべる。
「…なんで?」
「フィリアが心配だったんだよぅ!!」
「…ふぅ、ん」
ライラの心配が満更でもないのか、ちょっとだけうれしそうに口元を緩ませてフィリアは教室へ向かう。
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その日の放課後。
「あ、のさクレイク」
「フィリアから話しかけてくるなんて珍しい!なんだいフィリア!?」
これが恋の始まりだね!?なんてほざいたライラは、即座に頭を叩かれた。
「もし、よかったら…チーム、を組みません、か」
恥ずかしそうに、フィリアはライラを誘う。
断られたら、どうしようかな。
そんな不安を抱えながら、フィリアはライラの返答を待つ。
「あ、昼生徒会長と喧嘩してたやつだね?校内中その話でもちきりだったんだから!!1年のスィエルムーンが吹っかけたらしいぜ、って」
「それ、で?」
チームの話、はいいの?とフィリアは促す。
「いいよ勿論だよオッケーに決まってるでしょ!!じゃ、じゃあですよ、同室なんですよねヒャッホーイ!!」
ワーイワーイとライラははしゃぐ。
選択を早まったかもしれない。少しだけ、身の危険を感じたフィリアだった。
「それで、フィリア。チーム名はどうするの?」
チームとして活動するには、チーム名が必要となる。
というころで、ライラはフィリアに持ちかけるのだった。
「クレイクが決めれば、いいと思う」
「いいの?そうだねー…んー…あ、『ドラゴンムーン』ってどう?」
首をひねったライラは、思い至ったことをすぐさま述べた。
「どらごんむーん?なんで」
「私、ドラゴン好きだし、フィリアの苗字にムーンって入ってるから」
「ドラゴンムーン(緑)がいい」
瞳を輝かせたフィリアの言葉に、ライラは戸惑い気味にわけを聞く。
「み、どり?いや、それこそなんで」
「緑、色好き」
「あ…ああ、そういう。そういう…緑好きなの!?でも、フィリアって青色ばっかりだよね!?」
ちょっと待って!
ライラはフィリアをよくよく観察する。
青色の髪留めに、青色のネックレス、そして青い筆箱…緑の要素ないよ!?と突っ込みを入れた。
「それと、これとは別」
「そ、そっか」
「じゃあ、それで明日、青国の王宮に用事が、あるから、一緒に行く。行ける?」
「明日!?いきなり急だね!?いや、大丈夫だからそんな不安そうな顔しないでよ!」
驚いたライラは、フィリアの瞳が不安で揺らいだのを見とり、あわてて手を横に振る。
「よか、った」
「うん。申請書、出しに行こう?」
「そう、だね」
フィリアの手を引いて、ライラは別棟にある職員室へ向かうのだった。