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真・蒼国物語  作者: 松谷 真良
第3章 日常、そして夏休みだよ!!
21/34

第21話 誕生日

 王家の人たちがそんなたわいない会話をしている頃、ライラたちはというと。

フィリアの舞を見ながら、屋台で買い食いしていた。

視力のいいライラが、遠目にレオを見つける。どうやら皇太子としての立場で来ているようで、正装していた。しかしなぜか、緑国の正装である着物ではなく、スーツのような比較的動きやすそうな服を纏っている。暑そうだ。


「あ、レオだ」


それとはまた別で、レオの隣には猫耳のように逆立つ青い髪の青年が連れ添っている。彼の方は青国の軍服を身に纏っていた。


「本当だ。隣に青い髪のかっこいい人もいるね」

「っていうか軍服着てるよ?」

「…目、あった」

「え、こっちくる!?」


レンと目があったレオは4人に気付き、青年をひきつれて…もとい互いに牽制しあいにらみ合いながら、近寄ってきた。


「よぉ」


「やぁ?」

「「「こんにちは!」」」


ライラみたいにフレンドリー(?)に話しかける勇気も度胸もない3人は引き攣った声をそろえてお辞儀した。


「はっ、怖がられてますよ―レオ様?アッハッハッハッハ」


ざまぁwwと彼はレオのことをあざ笑った。

とたん、レオが冷たくも鋭い瞳で苛ただしげに睨み付ける。


「黙れ。犬風情が…」

「僕は犬じゃありませーん。オオカミですぅー」


全く答えた調子なく、彼はバカにしたように言葉を紡ぐ。ヒョエエエ、と4人から悲鳴が上がった。


「せいぜいテメェのご主人様にでもしっぽふっとけ」

「はいはいフィリア様にしっぽ振ってきますよーだ。貴方と違って僕はフィリア様の兄姉に認められてますからぁ」

「ちっ、おとなしく不審人物でも見張っていればいいものの…」

「貴方が一番不審人物なんですよ?」

「どこがだ!」

「そこがですよ!いいですか、一国の皇太子がフラフラしてるとかしんっじらんないですよ!?」

「どうでもいい。…見つけた。俺は行くからな、セイロウ?」


ニヤリと口角を釣り上げると、レオは人ごみの中をスイスイと縫って歩き去って行った。


「あ、ちょっと!」


セイロウも、あわててそれを追いかける。


「な、なんだったの…?」

「さぁ?」


疑問を残して、彼らは去って行ったのだった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 何のミスもなくフィリアは舞い終えた。剣を空中にしまいフゥ、と軽く息を吐き出して深く一礼する。息を詰めていた観衆から、歓声が上がった。少々乱れた息を整えると、リカルドとグリンダの方へ足を進める。


「覚悟しろ!第3王女おおおおおおお!!」

「え?」


通路の途中にいたフィリアへ、剣を持った男が通路の両側から数名現れて、切りかかる。悲鳴が上がった。

目を丸くしたフィリアは身構えて、やめた。

なぜなら、

「俺のフィリアに手を出そうなんて1000年早い」


と、レオがフィリアを自分の方に引き寄せたし、


「僕のフィリア様を殺そうなんて、させるわけないでしょう?」


セイロウがフィリアを庇うように前へ進み出てきたからだ。




「《屈せよ》」


フィリアをいったん離すと、レオは男たち向けて魔法を放った。

セイロウの方は大剣を鞘ごと振り回して、物理攻撃で男たちをのしている。

どこからかわき出て、男たちを数秒で片づけた2人は、今度は互いにバチバチと火花を散らしあう。


「第3王女3次元化計画?まだあったのか。なんで片づけていないんだセイロウ?」

「いやぁ、どこぞの誰かさんとは違って忙しいもんで」

「へぇえ」

「クフフ」


嫌な笑顔を浮かべてにらみ合う2人を黙らせて、リカルドが発言する。


「そこまでにしろ餓鬼ども。…進まないと寝れないだろう。さて、最愛の娘よ。我らが守護獣に誓う内容は定まっているか?」

「はい、父様」


励ますように、フィリアの背を軽く押すとレオは姿を消した。同様にセイロウもいつの間にか消えていた。


「ならいい。…《青国の守護者、シルヴァールーンよ。契約者の名のもとに姿を現したまえ》」


リカルドは立ち上がると、今回の披露最大の目的を始める。


 銀の毛並に青い瞳のオオカミのような巨大獣があわられた。それは、フィリアを見るとニコリと微笑んで…牙をむき出して、問いかける。


『問おう、今代の第3王女よ。汝は我に何を願うか。何を誓うか』


青国の守護獣シルヴァールーンに認められて初めて、青国の王族は成人した、一人前になったと世間にも認められる。

ここからが、フィリアにとっての本番だ。舞は前座に過ぎない。

深呼吸をすると、フィリアはここ3日間考えていたことを口に出す。ここに集まってきた国民あるいは他国民に聞こえるよう声を張り上げる。


「私、は。この国が平和でいられるよう尽くすことを誓います。凡百な誓いかもしれません。シルヴァールーンがたくさん聞いてきた誓いでしょう。けれど、私はこれを誓います」

『ほう。…して、理由はなんぞ?』

「私には、価値があるから。兄様や姉様たちは私をかわいがってくださっているし、緑国の皇太子様も寵愛を注いでくださっている。それだけでも、私はたくさんの人に狙われてきている。だから、そのことでこの国に争いが降りかからないように、私はがんばる」

『そうか…。がんばれよ、末姫。汝の行く末、見守らせてもらおう』


満足そうにうなずくと、シルヴァールーンはしっぽを一振りしてリカルドへすり寄る。

わぁ!!と観衆が沸く。ほっとしたようにリランは胸をなでおろした。

シルヴァールーンはフィリアを認めた。


「なんだ、獣」


邪魔くさそうにリカルドはシルヴァールーンへ視線を注ぐ。


『リカルド…君だけだよ我にそんな口をきくのは』

「そうか?鬱陶しいから離れろ」

『つれないね、君は』


青い瞳を輝かせると、シルヴァールーンは姿を消した。どこかでこの国を見守っているのだろう。

ひと段落したので、ここで閉幕にしようとリランは立ち上がる。

彼が言葉を発するのよりも早く、フィリアのまわりを炎が取り囲んだ。


「なっ」


また敵襲か!?と焦ったライは、次の瞬間溜息を吐く。

青年姿のフェカがフィリアを抱きかかえたのが見えたからだ。

それと同時に、ファイナがリランを座らせる。彼を立たせたままにしておくと、いざというときに反応できない。フェカを殴りに行ってしまうのだけは避けたい。…いや普段はどうであれ少なくとも公式の場では、避けたいのだ。


「俺様を差し置いてこんな面白いことをしているなんて…なぜよばなかった?」


突然現れたフェカはリカルドへ面白くなさそうに問う。

燃え盛る炎がフェカを取り巻く。ぶっちゃけ熱いんで勘弁してほしい。フェカから離れたいのだがフィリアは、腕力とかいろいろと負けて抜け出せない。ほんと勘弁してほしい。


「なぜ知らないんだ、逆に」

「くだらない人間がしていることに俺様が関心を寄せるとでも思っているのか、王よ」

「だから来ないと思ったんだが」


ああいえばこういう、なリカルドにフェカはムッとしたのかフィリアを下すとおもむろに近寄る。

青年姿のフェカはリカルドよりも背が高く、彼の王を見下す。


「仲間外れにするなんてひどいじゃないか」

「…めんどくせぇなおまえ」


舌うち半分にリカルドは吐き捨てた。もちろん、かたずをのんで見守っている観衆たちには聞こえないよう細心の注意を払っているが。

それを意にも介さず、フェカはフィリアへ熱い視線を注ぐ。



「俺様は!敬われるのが大好きだし讃えられるのも大好きだ!だがそれ以上にフィリアのことが、気に入ってる。フフフ…そうだな、何か贈り物でもしてやろうか。成人したのだろう?何がいい、わが憑代よ。お前の願いならなんでもかなえてやろう。国がほしいか?それとも…世界がほしいか?言え」


良いことを思いついた、とフェカは口元を釣り上げてフィリアの顎へ手をかけて上を向かせる。

腰を浮かせたリランを、脇に座っていたファイナとアースが肩をつかんで椅子に引き戻す。



「兄上、我慢」

「乱入すんなよ、頼むから」



どう解答するのか、注目がフィリアへ集まる。

フェカの指を一本ずつ引きはがすと、フィリアは首を横に振る。


「…ありがとう。だけどいらない。自分の願いくらい、自分の手でつかみ取って見せる。神様に叶えてもらったってなんもうれしくない」


無下に断ったフィリアに、息をのむ観衆たち。若い王女が神の怒りを買って滅びるのではないか。最悪の光景が目に浮かんだ。ただでさえ、緋焔神は好戦的で傲慢と言われているのだから。


「フッ…フハハハハハハハハ!!面白い、実に面白い。だからこそ俺様の憑代にふさわしいのだがな!まぁ、どうしてもかなえてもらいたい願いができたら言え。すぐにかなえてやる」


一瞬の間ののち、フェカは爆笑した。目じりに浮かんだ涙をぬぐうと、ポシポシフィリアの頭をたたく。

緊張が和らいだ。


「ありがとう」

「おうよ。俺様の偉大なる力を思い知れ。…しかし、あれだな。気に食わない。誰の許しを得て俺様の憑代に手を出そうなんて考えている?下種どもがっ!」


腰から下げていた、剣をフェカは鞘から抜き放った。

刀身が炎の大剣を一振りしてから切っ先を男たちのほうへ向けた。

轟、と焔が燃え上がり、レオとセイロウがのした男たちを焼く。


「フェカ神、殺すなよ?俺の楽しみが減る」


リカルドのそれどうなの、という牽制を受けてなのかどうなのか。予想に反して肉が焦げるにおいや断末魔は上がらず、男たちの額に小さな黒い焦げ跡が出来上がるだけだった。くるりと手の中で柄を回してから、フェカは剣を鞘に納めた。


「殺しはしない。ただ、死にたくなるような罰を下しただけだ。…そうだな」


何か思いついたのか、フェカはフィリアの額へ右手をかざす。きょとんとしてフィリアはフェカを見上げる。


「アイツっ、僕の妹に何を!」


またも腰を浮かせたリランを、ファイナとアースが押さえつける。


「兄上、どうどう」

「落ち着け、兄上」


フェカが手を放すと、フィリアの額に紅の紋章が浮かび上がった。


「これでよし」


満足そうにフェカは何度かうなずく。その間に、フィリアの額に浮かび上がった炎の形は消え去った。


「なに、したの?」

「なぁに、俺様と直々につながる回路を作っただけさ。これで、いつどこにいても一緒だな」


熱のこもった瞳でフェカはフィリアの頬をいとおしそうになでる。



「ストーカーっ!!」

「兄上!同感ですけど聞こえますまずいです!」

「気持ち悪いのー」

「リナ!よせ、思ってもいっちゃいけないことがある」

「…兄上たちみんな失言してるから大丈夫だと思う」


聞こえてきた兄たちの会話は流して、フィリアはフェカを睨み付ける。


「いらない」


なお、若干涙目である。


「返却はできないからな、残念だったな!」

「これ、半分以上呪いみたいなものじゃない!」

「アッハッハッハッハ」


力強い羽ばたきの音と風ともに、金色の無駄に光ってるドラゴンが空から舞い降りてきた。


『フィリア!…あー遅かったか!?』


おい王女おおおおおお!!でかいの呼んでんじゃねえよオオオ!聞いてねぇよオオオオ!?と睨み付けられたフィリアはあわてて自分じゃないことを巣徴する。


「リィ!?違う私じゃない、あれ呼んでないよ!」

『アレ呼ばわり…成人、おめでとう我が契約者。午前中に間に合わせたつもりだったが、臣下が放してくれなくてな』


言いながら、リィは姿を人型へ返る。そんでもってフェカとにらみ合っている。そりあわないんだよなぁ…などと現実逃避をしかけて、フィリアは我に返った。


「ああ、うんありがとう」


あ、やばい精霊さんたちも目立ちだがってる抑えらんないっていうか話聞いてくれないよ!?

冷や汗がフィリアの背中を伝う。

ドラゴンとか、目立ちすぎだからやめて。そう思ってよばなかったのに空気呼んで!

フェカのストーカー攻撃でただでさえ泣きたくなってきていたのにとどめを刺された気分だ。


《愛し子、目立ちたい!!ズルい!ドラゴンと神だけずーるーいー》


抑えきれなかった風の精霊が暴走した。

フィリアの魔力を奪い取って、実態を確保する。緑髪をツインテールにした幼い少女の姿をとると、風の精霊はリィとフェカのにらみ合いに参戦する。


「あ、ああああ…終わった…」


キャパを超えたのか、フィリアはうつろな目で、目の前で繰り広げられる惨劇を眺める。


「そこまでにしろ、人外どもが。暴れるな、俺が始末しなきゃならなくなるだろうふざけんな」


おもむろに溜息を吐くと、リカルドが事態の収拾へ走った。フェカ、リィ、風の精霊の順番にこぶしをたたきこむ。もっとも、フェカとリィには残念ながら背丈が負けているので容赦なく胴体へ食らわせたのだが。

2人…1神と1ドラゴンは悶絶する。風の精霊は涙目になってフィリアへしがみついた。


「父様っ」


言ってる内容アレだったけどなんか一瞬だけ、父親が輝いて見えたんだ、とのちにフィリアは語る。


「さぁ、グダグダになってしまったコレの片をつけようか。よく聞け、わが国民よ。わが娘は、世界中の有象無象から認められている。喜べ、わが国民よ。わが娘は、緋焔神の寵愛をその身に受けている。讃えよ、わが国民よ。青国は、ただ栄えるのみ。俺が、その道を築く。俺が、導く。間違いなどありえるはずがない。安心して、日々を暮らすがいい。この国に降りかかる災厄は我ら王族がすべて振り払ってやろう。日々を営み、楽しめ。王たる俺が、それを約束してやる」


フィリアへまとわりつく人外どもを強制退場させ、リカルドは朗々と響き渡る声で集まった人々へ告げた。

それはあまりにも自信に満ちていて、傲慢で、そして力強かった。ありえない事柄を必然にしてしまうような、そんなものだった。



「いつもこうならいいのにっ!!」


一泊ののち、リランの渾身の叫びが響き渡ったのもまた、必然だった。


「兄上どうどう」

「これが落ち着いてられるか!というか僕は馬じゃないんだから、それやめてくれないかなファイナ?いくら妹だって許せるものとゆるせないものがあるよ?」

「わぁ、父上そっくり」

「ぐっ」


ファイナからの切り替えしに、リランはほぞをかむ。

そうして、リカルドの閉めの言葉とともに、フィリアのお披露目は終了する。


「はいはい、ちょっと道作ってねー?」

「王女様、通らせますからねー」

「落ち着いて―おさわりは手だけだよ?」


手際よく、衛兵たちが王宮へ向かう側の通路を整備して、フィリアを通す。



「フィリア」


リカルドはフィリアの手を半ば強制的につなぐと、簡単に抱きかかえて通路へ降り立った。


「…父様?」

「大きくなったな」


突然の言葉にきょとんとしたのち、フィリアは満面の笑みを浮かべてうなずいた。


「何人にも何事にも縛られず、お前の道を行け」


フィリアの結い上げられた髪を解くと、リカルドはそっと地面へおろし、その背中を押しだすのだった。




―――――――――――――――――「誕生日、おめでとう」


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