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真・蒼国物語  作者: 松谷 真良
第1章 初めましてこんにちは
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第1話 

 しばしの間、説明タイムにおつきあいください。

こればっかりはどうしようもないというかなんというか。

作者の作者による作者のための説明タイムです。

これないと設定わからなくなる。

説明してるところはすっ飛ばしても大丈夫だと思います。

 ここ、エンハンブレ大陸には、7つの国がある。

リスィエル王国、ファンカレイラ帝国、リョクオウ皇国、オウカ民主主義人民共和国、ハナシ公国、アレタチ軍国、そしてペガスス国。

この7国には略称があって、それらはすべて色で統一されている。

リスィエル王国なら、青。ファンカレイラ帝国は赤。リョクオウ皇国は緑。オウカ民主主義人民共和国は黄。ハナシ公国は黒。アレタチ軍国は、紫。ペガスス国は白という略称だ。

青国は、自然豊かで、大陸に流れる大きな運河の一つであるプラート河や、そのほか主要な河の水源を保持している。

そのために、青の名を持つ。

 赤国は、機械術が発達していて、土地と人口は大陸で一番大きい。青国の隣に面している国で、なにかと争いが絶えない。

そのため、赤の名を持つ。

 緑国は、7つの国家の中では皇族の歴史が長いほうで、《魔の森》と呼ばれる鬱蒼とした森に領土の約3分の1をおおわれている。

そのため、緑の名を持つ。

 黄国は、《魔の森》に国土の半分をおおわれ、もう半分は砂漠、と極端に偏っている。かつては、国土すべてが砂漠だった。

そのため、黄の名を持つ。

 黒国は、一年のうちのほとんどの時期が氷に覆われている雪国で、そこを掘ると特殊な鉱石である《氷魔結晶》が採掘できる。

そのため、黒の名を持つ。

 紫国は、半年の間雪が降り続ける。国民全員が軍隊に所属している国で、独自の方向に進化した一族が多々いる。

そのため、紫の名を持つ。

そして良く知られていないが、ペガスス国はペガサスが作った国らしい。どうもこの国は雲の上に有ると、聞く。

そのため、白の名を持つ。





…というのが、この大陸間における国家の特徴です」

「スィエルムーンありがとう」

「…いえ」


長々とした説明を淀みなく言いおえ、席に着いた彼女の名前はフィリア・スィエルムーンと言う。

 銀糸のように透き通った銀色の長い髪に、あまり感情を移さない碧の瞳。真っ白な肌。人形の様に整った彼女の容姿に、入学したての頃は誰もが2度見した。

彼女のスィエルムーンという苗字は、どこの国の上層階流でも聞かれない。しかし、この学園の生徒会長にして青国の第3王子であるライ・リスィエルと2人で並んで笑い合っている姿が目撃されることが多々あるため、只者ではないのだろうと推測されている。

 彼女が入学してまだ1か月しかたっていない。けれど、彼女に告白しようとする人や、彼女を何らかの方法で陥れようとする人は山のように湧いた。

ところが、それらの人は男女関係なく全員、顔を青くして「緑の悪魔がっ」とうわ言のようにつぶやきながら帰ってきてしばらくの間はフィリアへ近寄ろうともしなくなる。

それが何度も繰り返されたので、生徒たちは悟った。

 彼女に一定以上近寄ろう、もしくは危害を加えようとすると何かの禁忌に触れるらしい、と。

よって、現在彼女と必要以上に親しくなろうと考える生徒は、1人を除いて誰もいない。


「ではクレイク。この学園はどこの国に属しているか?」


フィリアの隣の席でスピスピと快眠を貪っていた女子生徒が当てられる。

 彼女の名前はライラ・クレイク。本人いわく、「無造作ヘアー」だというハネまくった金髪に、感情に忠実でクルクル揺れ動く黄眼が特徴だ。

 名前を呼ばれ、むっくりと机から顔を上げたライラは、隣の席で頬杖をついているフィリアと目があい、にっこり笑う。

そう、ライラはいまだにフィリアを仲良くなることをあきらめていない、ただ1人の生徒だ。


「クーレーイークー?」

「ああ!っと、どこの国にも属していません。さまざまな国から生徒が集まるために、《魔の森》深部に作られたこの学園は中立地帯となっています」

 

あわてて立ち上がって答えたライラに、教師はうなずくと着席を促した。


「今、クレイクが言った通り、ここアリア学園は中立地帯となっている。国家から干渉をされず生徒がのびのびと成長できるように、そして次世代の国家を担う優秀な若者がさまざまな考えの人と触れ合えるようにしたい、と初代校長が創設したからだ。実際、今の生徒会長は青国の第3王子だし、3年には紫国の第2師団長がいる。あとは、現在青国王であるリカルド王と、緑国王のオルノ王も通っていた」


カッカッと軽快な音を立てて、教師は黒板に各国の関係図を書いていく。


「これが現在の各国間の同盟、敵対関係の模式図だ。やはり、赤国は敵対関係のほうが多い。青国と緑国が組んでいる同盟は壊れないだろうな。学生時代を共に過ごしたからか、あの2人の王は仲が良い」


チョークを置くと、教師は生徒たちの方を振り返る。


「さて、これを覚えるように。まぁ、もう覚えている生徒もいるだろうが。まだまだ復習の域から出ていないから、余裕だろう?とくにスィエルムーンなどは。どうだ?」

「…覚えて、ますけど」


いきなり話を振られたフィリアは集まった視線に内心驚きながら、淡々と事実を述べた。

その回答に満足したように何回かうなずいた教師は、教室の壁にかかった時計を見て、困ったように頭をかいた。


「だろうな。さて、時間が余ったな…。ああ、1か月たったから、《依頼》はもう受領できるのか?」


はい、先生!と元気な声が上がる。


 依頼、というのは生徒に実践を行ってもらう為にアリア学園が取り入れた授業だ。

《魔物》と呼ばれる特殊な生物の討伐から、教師の私用が混じる薬草探し、人探し、物探しなどまで幅広い種類があり、ごくまれに、民間や王家からの依頼が来ることもある。

 依頼は、基本的にはA~Dまでの5段階表記で難易度を表し、生徒にもA~Dまでの5段階評価をつけることで、その生徒の実力に合った依頼しか受領できないようになっている。



「このクラスには…ああ、スィエルムーンとクレイクがAランクだったな」


教師の確認に2人はうなずく。

そして、ざわめきだす教室。


「あれ…?」

「スィエルムーンさんってこの間Sランク昇格試験受けてなかった?」

「何、落ちたの?」

「受からなかったかんじ?」


そんな中傷に、フィリアは全く興味が無いようで、頬杖をついて窓の外を眺める。


「…まぁ、惜しかったなスィエルムーン」

「!余計なことをしたのは、私の方です」


どこか気まずそうな教師の声音に、フィリアは一瞬驚きの顔を見せたが、すぐに取り繕うようにして真顔になってしまう。


依頼を受領して終了していくと、生徒カードに、依頼毎に設定されている得点が加算されていく。

ある一定の得点に到達すると、ランク昇格試験を受けられるようになる。

 ランクも、基本的にはA~Dの5段階評価。さらに、その上のSランク、SSランク…と昇格する者もいる。が、そんな生徒は滅多に現れない。


「Sランク、と言えば今年度の生徒会長がSランクだったな。それも単独で」


さすが!!といった感じの賞賛の声が上がる。


「しかし、お前らはチームを組むなりしてランクを上げていけばいいんだからな?無理して、怪我すんなよ。特にスィエルムーン。お前、死にかけていただろう」


 一人だけで依頼を行っていると、どこかでつまずくことがある。そうした人たちは、実力の近い数人で集まって依頼をこなしていくようになる。この集まりをチームと呼ぶ。チームを作ることで、依頼の得点が、均等に振り分けられるようになり、依頼の難易度も少しだけ下がる。

 なお、チームを作った場合、チーム内の同性と寮の部屋が同じになる。だから、仲のいい人とチームを組み、一緒に依頼をこなしていく、という動きがよくみられる。


名前を呼ばれてギクリ、とフィリアは肩を揺らす。


「あれはっ、邪魔、が入ったからで…そんな、別に痛くなかった、し治癒魔法かければすぐに治ったし本当ならあの後まだ、やれたのに」


抗議するようにフィリアは声を張り上げたが、視線が集まったことに気付くと、顔を赤く染めて声を小さく落とした。


「血まみれだっただろう」

「そんなの、切れた場所が場所だからです!別に、私は一人でできる!今までも、そうだったんだから、これからもできる。大体、あれはまさか正気を失ったドラゴンが突っ込んでくるなんて思ってなかった、わけで」


先日、フィリアがSランク昇格試験を受けていたところ、なぜか漆黒のドラゴンが彼女めがけて突っ込んできたのだ。

そして、暴れまわりなぎ倒し火を噴き…と尋常ではない様子だったので、急遽フィリアが討伐したのだ。その身に深い傷を負って。


「それはこちらも想定外だった」

「試験の内容は、きちんとクリアしていたしその上ドラゴンも倒したのに、なぜだめなのか理解できない」


結局、彼女はユニコーンの角を収集という試験の内容をこなしていたにもかかわらず、試験不合格を言い渡された。

それについて納得しきれていないのを、これ幸いと教師にぶつける。


「…いいか、スィエルムーン。お前は危なっかしい。お前が、何を背負ってここにいるのかはわからない。だが、そのまま突っ走ると、いつか死ぬぞ」


軽くため息をついて、教師は述べる。それが、自分を心配しての言葉だということは十分に分かるフィリアだったが、それでもやりきれなかった。


「死にません。…死ね、ません」


グっと強くこぶしを握り締めると、彼女はうつむいた。


「時間だな。…この話はそこまで!では、みんなも依頼、がんばれよ」


鐘が鳴ったと同時に教師は無理やり話を切り上げて、教室を去って行った。

これが午前最後の授業だったから、昼食をとりに生徒たちも教室から出ていき始める。


「……」

「フィリア、どうしたの?」


教室を出ようとしたライラが、目ざとく動く気配のないフィリアに気付いて、声をかけた。


「…クレ、イク?」

「あ、覚えてくれた?ライラでいいのにー。移動しないの?昼ごはん、くいっぱぐれるよ?」

「いい、食欲ない」


力無く首を横に振り、フィリアは拒絶を表す。


「いいからいいから!とりあえず行こうよっ」


無理やりフィリアを立たせて、ライラは食堂へ引っ張っていく。




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