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◇ 03
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彼は突然訪ねてきたのだった。
「みちるに、逢わせてください」
すらりとした上背のある、やや線の細い肩に黒っぽいジャケットを羽織り、
彼は、私の住処の入り口、開いているドアの前に立ってさりげない口調でそう切り出した。
挨拶もなく。
「みちる、ですか」
答えを探しながら、私は彼をじっと観察する。
口調の淡々としたのを補うかのような、強い目のひかり。
それでも私の顔だけは、決して見ようとはしない。しかし
逢えるまでは、帰らない。
その目はそう告げていた。