◇ 02
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みちるが死んだのは、多分に私のせいではないかと思う。
何ごとにもとりかえしのつかない瞬間はあるものだ。
あの日。
いつものように彼女におはようを言って、窓を開けて空気を入れ替え、他愛ないことを話して聞かせながら共に過ごす朝を束の間味わう、そんな儀式めいた流れは突如、あの瞬間に終わりを告げた。
目の前の光景がどうしても理解できなかった。
みちるは、目を開いたまま仰向けに横たわっていた。
幸せそうな笑みを口の端に残したまま。
理解できなかった。
ヒトハイツカシヌモノデス。
いつの間にか教わっていた、それとも知らされていた事実。
ことばとしては何の疑念もなく、すんなりと飲み込めていたその一行。
それがこのような、長々とした白い肉のかたまりとなって、私の目の前に否応なく突きつけられているのは、全くもって尋常ではない。
おかしかった。あまりにも理不尽過ぎた。先ほどまで息をして、笑って、しゃべっていたその姿がただのモノにすり替わっているのだから。
しかし
私は告白せねばならない。実は、ほっとしていた、と。
ずっとずっと願っていたことだったから。
どうか、一刻も早く私の目の前から消えてください。つよくつよく願っていたのだから。