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◆ 06
踏切に嵌り込んだ軽乗用車に通勤快速が衝突し、脱線。
死者34名、重軽症者110名を出す大事故となった。
みちるは、たまたま通勤途中にその踏切を通りかかり、事故を目撃した。
すでに救急車が見たこともないくらいの数乱雑に停まっており、合間あいまに消防のレスキューが赤く挟まり、あたり黒い煙が趣味の悪い屏風絵のように景色を所どころ覆っている、そんな報道写真を何枚か見た。
最初にその写真を見た時、正直思った。
僕がその場に行き合わせていれば良かったのに。
何ならば、この中に倒れている者のひとりでもいい。
死を、痛みを、苦しさを
他から与えられた、不可抗力としての死を一番欲していたのは僕だった。




