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灰色の羊  作者: 御目越太陽
プロローグ
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プロローグ

電撃大賞に落ちた奴です。

続きは推敲が終わり次第順次と言うことで。


2018/10/08

ちょっとした気まぐれで読みやすくなるように再編集。

文章の修正はありません。


「生物は何故進化するのでしょうか?


 環境に適応するため? より多くの子孫を残すため? あるいはその両方か。


 まあ色々考えられますが、進化という見地から見て、人間は殊に特別な生物であると言えます。気圧、気温の高低に関わらない地上のあらゆる陸地を生息域に変え、旺盛な繁殖力と高度な知能でもって今なお止まることなくその個体数を増やし続けている。


 注目していただきたいのは、例えば気温が高く生物が生きていくにあたって必要不可欠な水分の乏しいサハラの砂漠や、平地に比べて気圧や酸素濃度が二十パーセント近く低い、ともすれば深刻な高山病を誘発する恐れのあるアンデスの高地など、本来我々にとって決して住みよい土地ではないはずの場所にまで人間は適応してしまっていると言うことです。それも自らを土地に合わせて進化させるのではなく、自らの住みやすいように環境の側を変えていくと言う全く独自の方法でね。


 私は初め、これを利己主義的進化と名づけましたが、後の研究でそれが正しい表現ではないと考えを改めるようになりました。まあ、人の場合は進化と言うより進歩と表現した方が適切かもしれませんが、偉大なる先人にあやかって、ここはあえて進化とさせていただきましょう。


 さてここで、初めに提起した問題に立ち戻ります。


 生物は、いや人間は何故進化するのか、と言い換えた方がよいでしょう。


 古来、人は自身にとって足りないものを補うため知恵を用いてきました。馬より早く走るために車を生み出し、鳥のように飛ぶために飛行機を作り出し、果ては空の上、宇宙空間にまでその手を伸ばそうとしています。そして自分たちよりも遥かに優れた能力を有する種々雑多な獣に勝つために様々な武器を開発し、自然界の頂に君臨した今その自分たちをすら倒すためになおも武器を作り続けている。


 はたしてこれは、本当に利己のためだけなのでしょうか?


 利己のためだけだと言うのなら、人の進化が地球の外にまで及ぶことは無いでしょう。全ての生物の頂点に立った段階で止まるはずです。環境は安定し、もはや自身を脅かすものなどいないのだから。


 では何故今も人間は進化をし続けているのでしょうか?


 その問いに対して私が出した答え、それは欲求です。


 人間の進化は利己ではなく欲求に根ざしたものであると私は考えます。馬より早く走りたいと言う欲求が人に車を作らせ、鳥のように大空を飛びたいと言う欲求が人をして飛行機を作らしめたのです。


 人間の進化は、あれをしたいこれをしたいと言う欲求があってこそ加速する。欲求があればこそ、人間は今でも進化をし続けることが出来るのである。


これが私の考えたフラストレーション進化論、その概要となります」


 会場は冷めていた。マイクを手に取る老人の言葉も、それを聞く者たちの顔も、例外なく興味の色を失していた。


 その老人の助手である青年は妙な違和感に首をかしげた。


 会場の目が冷たいのはいつものことだ。しかし、いつもの老人ならそんなことなど露ほども気に掛けず持論をまくし立てているはずである。


 バカみたいに元気に。少年のように無邪気に。


 誰も聞くものなどいないとしても、いつもの老人ならさぞかし楽しそうに夢を語っているはずである。


 彼の目に映る恩師の姿は、まごうことなくただの老人そのものだった。


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