孤独とは。
「退屈で仕方がないの。」
咲桜里が、メールを頻繁によこしていた。彼女も、俺と同じ、母親の再婚で、中途半端な家庭を持っていた。いつも、何かから、逃げている、似たような生い立ちが、俺らを、近づけていた。
「ねぇ・・。大翔?」
屋上で、さっきまで、吸っていたタバコを、もみ消すと、赤い唇を近づけてきた。
「二人で、しない?」
挑発的だった。
「よせよ・・。」
俺は、拒否した。あまりにも、俺たちは、似すぎている。咲桜里の孤独感を、理解はできるが、彼女に、同情もしなげれば、抱きたいとか、そんな気は、全くしなかった。彼女と、仮にそうなったとしても、傷の舐めあいになるのは、見えていた。惨めすぎる。
「あたしじゃ・・。嫌?」
「お前は、そんなんじゃない。」
いつも、互いの母親には、泣かされた。小さい頃から、咲桜里の父親は、よく変わった。一時は、離れたものの、この学校で、再会した時には、驚いた。無邪気で、可愛い子だったのに、咲桜里は、変わっていた。
「ふーん。いい方にとていいのかな?」
彼女は、何度も、カラーを繰り返し傷んでしまった髪をかきあげた。
「好きにしろ。」
俺は、携帯をポケットに入れた。
「何度も、メールよこすから、何かと来てみれば、そんな事か・・。」
咲桜里は、ふっと、笑った。
「そんな事じゃ、ないよ・・。」
自分は、関係ないとばかりに、遠くを見ていた。
「なんだか・・。寂しくてさ。」
また、携帯をいじっていた。
「誰か、来てくんないかな・・・ってさ。」
咲桜里にも、孤独が、強く残っている。俺と同じ・・。孤独。誰かに強く、愛されたいと思いながら、いざとなると、拒否してしまう。人を信じたいのに、信じられないでいる自分がいる。
「これるさ・・。」
可愛そうな咲桜里。妹のように・・。
「でも、おまえとは、出来ない。」
「大翔・・。」
怖い目で、俺をみていた。
「誰となら、できるの?」
「いないさ・・。そんな人。」
南から、乾いた風が、吹き抜けて行った。俺の心の中に、細い影が、すり抜けていった。
「いない・・。」
なぜか、あの人。かんなの後ろ姿が、よみがえっていた。