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呪縛・・・。その四。

このまま、逢ってどうする?そう思いながら、ハンドルを握った。もう、戻るべきだと思う。かんなは、結婚するんだし、紫苑との思いにかられて、俺の絵を利用したのかもしれない。そこに、俺への思いがどうだとか、青臭い確認をした所で、どうする?もう、時間がたってしまった今、このまま、何もせず、何も、言わず、帰るのがいいと思っていた。それでも、心と体は、バラバラで、かんなの、マンションに向かっていた。あの日と同じ・・。車を、少し離れた所に、とめ、マンションに向かって、あるって行こうとしていた。時間まで、まだ、間に合う。

「すみません。」

隣の車のドアが、少し、俺の車にあったのか、男が飛び出してきた。

「すみません。ドア開けすぎちゃって、傷になってないですか?」

荷物が、予想の他、大きかったらしい。ドアを大きく開けすぎて、俺の車に接触していた。

「たぶん・・。」

音も、そうしなかった。軽くあたっただけだと思う。傷もない。

「大丈夫ですよ。」

俺は、微笑んだ。背の高い繊細そうな、青年だった。

「荷物・・。大きそうですね?」

どうやって、車に入れたんだろう?と思うほど、大きな荷物だった。その割に、薄い。

「絵画?ですか?」

「あぁ・・。わかりますか?」

「こんなに、薄くて、大きなのは、それ以外にあまり、考えられない。」

「ですよね?」

青年は、そっと、取り出した絵画を、車の脇に立てかけた。

「持ってあるくのも、大変ですよ。」

「一人で?」

「そうです。そう言われましてね。」

横に抱えるなら、何とか、持てそうだ。

「どうしても、すぐ、持って来いって言われてね。普通、配達までは、しないんですけど。」

車にキズが無かった事が、男を饒舌にしていた。

「渡して、縁を切りたいって、言われて。あぁ・・。僕、画廊に勤めてるんですけど」

「画廊に?」

「えぇ・・。」

男は、きょとんとしながら、それじゃあと言って、車の間を慎重に、すり抜け、通りに出て行った。

縁を切りたい絵・・・。それは、誰に届ける絵なのか。俺は、その男が、かんなのマンションに向かわない事を祈りながら、後を、つけて行った。かんなのマンションと同じ方向に、確実に歩いていく。その背を、みながら、何度も、同じ、思いに駆られていた。

「引き返せ。」

そう、引き返すべきだ。あの絵の行先が、かんなだとしても、自分に責める理由はない。じっと、マンションの、入口で、かんなの、来る方向を見ていた。もう、星が出ていた。今夜は、やけに、星の数が多い。


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