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君の横顔に。

窓越しの日差しが暖かい。もうすぐ、寒い冬がやってくる。暑かった夏も過ぎ、心配されていた紅葉も、思いのほか綺麗だった。

「夏、暑いと、あまり紅葉は綺麗じゃないんだって。」

幼馴染の咲桜里が言った。どうでも、言い事をさっきから、えんえんと話している。聞いているふりをしながら、僕は、何も聞いていなかった。意識が、彼女の所には、いってなかった。ずーっと、僕は、考えていた。あの人の事。体の弱い弟の所にきた先生。何度も、母親が再婚相手である父親に気を使いながら、何度も替えてようやく決まった先生。母は、父親の連れ子である義弟に、ものすごく気を使っていた。負担をかけては、いけない。小さい頃から、僕は、そう思いながら、育ってきたと思う。幼稚園のお迎えも、母は、父親の連れ子である弟を優先し、僕は後廻しだった。弟の保育園を、回ってから、迎えに来る。参観も、何もかも。僕が、兄貴だから、後なのか、それは、わからなかったが、いつも、母親の、目には、義弟しか、映ってないように見えた。僕が、母親が、憎んで別れた男に似ていたせいなのか・・・。あまり、愛されてなかった気もしていた。とにかく、義弟は、僕の母親を、独占していた。そして・・。あの人も。

「こんにちは。」

かんなだった。大学に通いながら、アルバイトで、家庭教師をし、学費を稼いでいるといった。中学のHRにだけ、顔を出し、帰宅する弟・拓未の教師。僕は、時々、高校をサボっては、リビングにいる二人の様子を見ていた。

「今日、大翔君、学校は?」

「俺?」

真っ直ぐな目で、僕を見ていた。本当に、講師なのか?笑った。らしくない。その辺の、学生とかわらない。先生ぶるんが、鼻につく。

「休み。」

「そんな訳ないでしょう?」

「あなたは、俺の先生な訳?」

あなたも、拓未の事が心配できているんだろう?僕は、そう思った。もう、何年もこうやって、僕は、脇役できたんだ。

「そうじゃないけど・・。」

余計な事を言った。かんなは、口ごもった。

「時期が、時期だから・・。」

「大学。」

僕は言った。形だけの、両親にずーっと、言われてきた。

「俺は、誰かさんと違って、金かけなくても、大丈夫なの。」

だよ。一人で、きたんだ。僕の傍には、誰の心もない。

「弟をみるのが、あなたの仕事でしょ。」

大学は、心配ない。一人でいる時間が長かった。関心を持ってくれない両親の気をひく為、勉強はした。運動も。だけど、結局、孤独だった。頼りなく未完成な弟は、周りの関心をひく。そうきっと、あなたも。

「そう言われると・・。」

かんなは、拓未に向き直った。弟は、俺に、何を言われても、言い返せない。優しく、微笑みながら、僕を見ている。穏やかな弟。自分から、欲する事なく、何でも、得る事が出来る。穏やかな弟は、父親譲りなのだろう。母親は、魅かれた。僕の、攻撃性は、母親の、憎む男のそのまま。それでも、母親は、愛し、度を越した愛情は、憎しみに変わる。2人は、別れた。僕は、母親に、連れられ、この父子のもとに来た。

「気にしないで、すすめて。」

僕は、キッチンに立った。コーヒーを入れてあげよう。珍しくそんな気になった。

「そうね。」

かんなは、持ってきたバックから、何冊も、本を取り出していた。自分で、ノートの表紙を作ったんだろう。見慣れないデザインだった。

「先生にならなかったら、何になりたかったの?」

拓未が、聞いていた。

「美術。デザインしたかったの。」

講師からは、程とおい笑みだった。

「コーヒーのむ?」

カップを2つ渡そうとしていた。かんなの、微笑に、みとれてしまった。てもとが、狂った。

「ごめん。」

僕は、すぐ、謝った。コーヒーが、かんなの、ノートに、飛び散っていた。

「ごめん。すぐ拭くから。」

あわてて、キッチンに雑巾をとりに走った。

「大丈夫。」

かんなは、少し、悲しい顔をした。

「大丈夫だから。」

取り出したハンカチで、拭いていた。

「わざとでないんだ。」

僕は、言い訳をしていた。


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