星ふる夜に・・・。
真冬の星は、怖いほど綺麗だった。どうしても、かんなに渡したいものがあった。
「待ってるから・・。」
紫苑は、そう伝えた。
「でも、いつ、帰れるかわからない。」
かんなは、答えた。光樹との約束があった。紫苑への、気持ちと光樹への気持ちは同等だった。紫苑のもとへと行きたい。そう思いながら、秀香への遠慮があった。
「俺たち、付き合ってるんだよね。」
優しい光樹の言葉を否定できなかった。
「そう・・。よね。」
かんなは、答えた。
「明日は、イブはどうしてる?」
当たり前のように、光樹は聞いた。
「来るよね?」
誘われた。
「えぇ・・。」
消え入りそうな声で答えた。紫苑との約束があった。
「いろいろ・・。用意してるから。」
ずーっと、光樹との約束を断っていた。嬉しそうに話す光樹の顔に断れなかった。
「行くから・・。」
紫苑とは、昨日、つまらない焼きもちで、喧嘩したままだった。でも、以前から、一緒に過ごす約束はしていた。
「あの・・。」
紫苑は、待っている。
「何?」
光樹は、無邪気な顔で、振り返った。
「なんでも・・。」
ない。かんなは、思った。紫苑が、待っていてくれる保証はない。彼は、プライドが高い。きっと、秀香との、焼きもちも、光樹との事も許してくれない。待っていてくれるはずがない。携帯のメールも、何も、答えてくれない。
「行くから。」
そう答えてしまった。
「約束するから。」
イブには、渡したいものがある・・。
紫苑が以前から約束していた日。かんなは、光樹の家に向かっていった。真っ青な、星の綺麗な夜だった。
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星は、どこまでも、綺麗だった。雲のない分、月が煌々とし、空気が澄みきっていた。
「寒いな・・」
紫苑は、月夜の下にいた。どんなに、待っても、かんなは、待ち合わせの街角に姿を現す事はなかった。吐く息が白い。
「そうだよな・・。」
付き合っているのかどうかわからない。二人。逢うと、喧嘩してばかり、気持ちを試す事ばかりだった。だけど、キャンパスの上では、互いに素直になれた。
「もう少し、俺たちには、時間が必要なんだ・・。」
光樹が言った。互いに競いあった友。
「だけどさ・・。」
時間も過ぎ、紫苑は、用意していたワインの、栓を開けた。雑にあけた開けたせいで、持っていた花束に少しかかった。
「時間がないんだ・・。」
星がきれいだった。一人で、口にしていると、無性に、かんなの絵がみたかった。癒される人の絵。
「かんな・・。」
紫苑は、凍てつく寒さの中、アトリエを目指して歩いて行った。
「声がききたいよ・・。」