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寒椿、雪に咲く。

あぁ・・・。そうだよ。何て、綺麗な花が咲いているんだろう。雪の中で、真っ赤に咲き誇る花達。それは、薔薇の花?いいや、これは、雪椿だよ。君は、薔薇の花のように、華やかな人であったが、いつも、寂しそうで、誰かに頼らなければ、生きていけなそうで。俺は、そんな君に魅かれたんだ。華やかな、影に見れる君の鬱とした、姿。僕が支えていきたかった。俺に、嘘をついてほしくなかった。

「大翔・・。」

かんなは、うっすらと目を開けていた。真っ直ぐ、僕をみている。俺だけを。

「ごめんね。」

ごめんね?ここにきて、謝るのか?かんなの、目尻からは、細く涙の後が光っては消えた。

「ごめんねしか、言えないから。」

長い髪。ゆっくりと、巻かれたその毛先は、赤く染まっていた。何に染まっているんだ。俺は、あらためて、その、染まっている胸を、見やった。

「あたしが、悪いから。」

声に力はない。そうだろう。全て、君から、力が抜けていってる。もう、君に、生きる力は、ないと思う。俺が、君に終わりを告げる。何も、俺の手に、入らないのなら。君の生きる力を、手に入れよう。そうして、君は、俺のものになるんだ。紅く咲いた花は、君の命の証。俺の両手を、君の血で、染めて・・・。

「大翔に、いつか、こうされてもいいと思っていたから・・。」

かんなは、静かだった。雪の上に、横たわり、俺を、見上げていた。

「もう、終わりなのかな?」

「かんな・・。」

ようやく、俺も、事の重大さに気がついた。思いどうりにならない、かんなに、俺は、勝手に、誤解し、思いつめたこの結果。かんなをこうする事で、全てを得ようとした傲慢さ。結局、こころまでを支配する事はできなかった。あの日へ・・。時間は、遡る。あれから、いったい、幾つの星夜を数えたのか。

「俺は・・。」

かんなを、刺してしまった。約束する時間に、現れず、勘違いした俺は、かんなの、マンションに向かった。駐車場に、現れたかんなは、僕を見て、微笑んだ。避けている訳でも、逃げる訳でもなかった。それなのに・・・。

「君を、殺そうとした・・。」

殺したい。確かに、そう思いつめていた。思いどうりにならないかんなを。変わってしまう前に、このままの時間を止める為に。

「大翔・・。早く、逃げて。」

かんなは、俺の刺したナイフを、握り締めていた。

「かんな・・。俺は。」

時間は経っていない。かんなは、変わっていない。変わってしまったのは、俺の方。いろんな情報に惑わされ、真実が見えなくなっていた。

「大丈夫だから・・。」

血が、止まらない・・。後から、後から、血が噴出してくる。俺は、これから、どうしようとしているのか・・。よろよろと、歩き出していた。かんなは、逃げろと?そんな事できるか。とにかく、救急車だ・・。救急車を呼ぶんだ。俺は、血で、滑る手で、携帯を取り出した。動揺していた。誰が、かんなを刺し、誰が、罪となるか、考えられなかった。かんなが、自分で、ナイフの柄を、握り締めているのが、見えた。

「やめろ!」

更に、深く自分を、刺すのが、見えた。

「かんな!」

そう、俺は、携帯を、手にしながら、かんなに駆け寄りたかった。俺をかばうためなのか、自分を責めるつもりなのか、かんなが、俺の刺したナイフで、自分を傷つけていた。止めたかった。

「かんな。」

かんなの、両目が、僕を見ていた。悲しい目だった。俺の記憶は、ここで、途切れている。猛スピードで、走りぬける車に、跳ねられ、側溝に落とされてしまったからである。

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