1−2 逃走
翌日登校した咲希は、不穏な空気を感じていた。
誰かに見られているような気がする。
皆が自分のことを指差しているような気がする。
自分のことでヒソヒソ話をしているような気がする。
そんな居心地の悪さを感じながら、教室の机にカバンをおいた。
普段なら、話掛けてくるクラスメートも、今日は誰も近寄ってこない。
どうしたんだろう?
まさか昨日の写真のせい?
そんな時、クラスでいつもつるんでいる美幸が近寄ってきた。
「美幸、おは…」
言い終わる前に、美幸が言葉を被せてきた。
「咲希、あれはマズいよ」
「え?」
「とぼけないで!昨日の写真のこと!」
「…あ」
「みんな、抜け駆けしたって、すごい怒っているよ。なんで受験で忙しい佐々木先輩にちょっかい出したの?」
「違うの、あれは…あれは私じゃない!」
「え?でも、どう見ても咲希だったじゃん」
「実、でも、私、佐々木先輩と二人っきりで会ったことない」
「え?どういうこと?」
「私もわけがわからないの。でも本当に佐々木先輩と会ったりしていないし、あんな写真も撮ってない!」
「…ごめん、咲希がそんなことする子じゃないってわかっているけど…」
そういえば…咲希は昨日からずっと感じていた違和感に気づいた。
「…待って!本当に私が二人で佐々木先輩と会ったとしたら、あの写真は誰が撮ったの?」
「…そう言われれば、あの写真誰が撮ったんだろう?」
「だから、あれは私じゃないの!」
美幸は咲希の顔をまじまじと見つめた。
「…わかった。咲希が嘘つく子じゃないことは、よく知っている。だいたい佐々木先輩と会っていたら、きゃーきゃー言いながら真っ先に私に言うもんね」
「…信じて、あれは絶対私じゃない」
「…でも他の人はそう思ってないみたいだし…」
その時、教室のドアがガラッと、凄い音を立てて開いた。現れたのは上級生の女子グループだった。
咄嗟に、美幸が咲希を自分の後ろに隠す。
上級生女子グループの一人が教室を見回して、口を開いた。
「…咲希って子、どこ?」
教室は、水を打ったように静まり返る。
美幸がオズオズと喋った。
「あー、今日はまだ来ていないみたいです」
「そう、来たら3年の教室に来るように言っておいて」
上級生グループは、ゾロゾロと廊下を去っていた。
美幸がフーっと息を吐いて振り向くと、そこに咲希の姿はなく、カバンだけが机の上に置いてあった。
咲希は体一つで、学校を飛び出していた。
なんで私がこんな目に!
心臓がバクバクして、目から涙が出てくる。
どこへ行ったら良いかわからない。でもここからいなくなりたい。
<つづく>




