番外編1−1 パパの秘密のフォルダ
日曜の午後、私はリビングでコーヒーを入れていた。
「パパも飲む?」
パパがリビングのテーブルで、ノートPCを広げていたから、声をかけた。
「ああ、ありがとう」
「はい、パパのコーヒーカップ、あっ」
「あちちっ!」
私は、パパのコーヒーカップを持つ手が滑り、コーヒーをパパの足元にかけてしまった。
「ごめん、大丈夫?」
「大丈夫、大したことはない。ちょっとズボンを変えてくるよ」
そういって、パパはリビングから出て行った。
リビングには、開けっぱなしのパパのノートPCが残されていた。
「べ、別にわざとじゃないからね…」
私は、誰に言うでもなく呟いて、パパのPCを覗き込んでみた。
こないだの写真が気になってしょうがない。
デスクトップ上の1つのアイコンが目に止まった。
「TOP_Secret_Project_T」
怪しい…
私の頭の中に、以前パパが見せてきた水着美女の写真が蘇る。
あの時、パパは「AI画像生成のテスト」って言ってたけど…もっと他に悍ましいものがあるんじゃ…
「見たいような、見たくないような…」
私は小さく呟くとともに、リビングの入り口に目をやった。パパはまだ戻ってくる気配はない。
そうだ、これはセキュリティインシデント対応だ。危険なデータ(我が家の品位に関わるもの)は、娘として根絶しなければならない。
私は意を決して、フォルダをダブルクリックした。
この行為を、一生後悔することになるとも知らずに。
<つづく>




