第15話
もうそろそろ授業という時。
いそいそと、教室じゅうが教科書やノートを取り出していた。
教室がガヤガヤとする中、
ふと鈴は、栞が自分の無地の消しゴムを取り出すのを見て、思わず声をかけた。
「え、栞くん。使わないの? あげた消しゴム」
「うん。だって、鈴ちゃんのハートなんでしょ? 使えないよ。大事にする」
「ーーっ!!!」
栞にとっては自然に出た何気ない一言。
しかしその言葉は、愛の誓いそのものだった。
(なんでそんな……そんな大事なことを、この人はサラッと……)
鈴の頬が一気に熱くなる。
一瞬、教室の音が遠のき、次の瞬間にはざわつきが広がった。
「今の聞いた?」「やば……」「尊い……」
小声のはずなのに、鈴には全部聞こえる。
顔を覆いながら、机に突っ伏しそうになる。
心臓が跳ねすぎて、呼吸がうまくできない。
足先がバタつき、身体の熱が逃げない。
一方の栞くんは、
「え、なんでみんなそんなに笑ってるの?」
と本気で首をかしげている。
その無垢さが、さらにクラスの歓声を加速させた。
「栞、それプロポーズだよ!」
「いやもう結婚式の日取り決めた?」
「鈴ちゃん倒れるって!」
「ち、ちが……っ……!」
否定しようとする鈴の声は裏返り、余計に誤解を深めてしまう。
栞くんは、
「え、そんなに大事なこと言った?」
と心底不思議そうにしている。
その“分かってなさ”が、鈴の胸をさらに締めつけた。
鈴は机の下で、そっとお揃いの消しゴムを握りしめる。
胸の奥で「大事にする」が何度も反響して、呼吸が浅くなる。
(な、なんでそんなこと……自然に言えるの……)
顔を上げると、栞くんが心底心配そうに覗き込んでいた。
「……鈴ちゃん、本当にどうしたの? 具合悪いの?」
その無垢な問いかけが、鈴の心臓に追い打ちをかける。
クラスメイトたちは、もう半ば祝宴状態だった。
鈴は真っ赤になったまま、ただ机に突っ伏すしかなかった。
※この作品はカクヨム版が本編です。
続きはカクヨムにて更新しています。
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