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第87話 レイジャーフッド大森林


「ほお、これはなかなか見ごたえのある景色だな――」


 トールは、目の前に広がる大パノラマを見て感嘆の声を上げる。


 昨日「キングス・チェリー食べ放題」を堪能した4人は、今朝、レイラさんの用意してくれたラジュランジ村の旅館を出て、ここにきている。


 この場所は、ラジュランジ村から2時間ほど南へ進んだところだ。

 小高い丘を登り切った場所に展望台が設置されている。ラジュランジ村の南に広がる大森林、レイジャーフッド大森林を眼下に見下ろせる展望台だ。


「このレイジャーフッド大森林を抜けると、隣国のカリセルス王国との国境になります」 

と、レイラさんが注釈を入れてくれる。


 トールも少しだけ知っている。

 隣国カリセルス王国は、この国、クリレール王国とは絶縁状態で、国交は正常化されていないらしい。

 だが、戦争状態だったのはもう何十年も昔の話で、それより後は、『一時休戦』がずっと続いているらしい。


「それもこれも、この大森林が越えられなくなったから、なんですよね――」

と、レイラさん。

「見えますか、あそこ?」


 そう言ってレイラさんが前方を指さす。

 そこには、大森林を二つに区切る、黒っぽい「線」が存在していた。


 通称、『魔界へつづく裂け目』ダーク・フォール――。


 レイラさんの話によると、このレイジャーフッド大森林に突如として現れた大渓谷で、レイジャーフッド大森林を、「北区と南区」に完全に二分しており、向こう側へと渡る術が今は存在しないのだという。


「魔物はいませんよ――」

と、ラムが不意に言う。


「そうなんです。魔物はいないんですが、亀裂が深すぎて橋がかからないんですよ――」

と、レイラさんが応じる。


 この渓谷はまるで大地に入った傷のように地面が割れており、底が計り知れず、裂け目の一番狭いところでも、数百メートル以上はあるようで、橋が掛けられないのだとか。


 王国から直々に、これまでに冒険者ギルドにも調査依頼が下りてきたのだが、何度か実態把握に乗り出したものの、結局は渓谷の底に到達することが出来ず、調査は計4回で終了となった。それも、すでに何十年も前の話で、それ以降、この渓谷に橋を架けるプランがあがることは無くなった。


 そうなると、この森林を抜けることが叶わず、こちらからカリセルス王国へ到達するルートは、西のレーバン王国を抜けるか、東のシーバイン王国を抜けるかの2択になり、いずれにしても、直接に行き来することができないため、結果として、カリセルス王国とクリレール王国は『休戦』ということになったのだった。


「まったく、どうしてあんなものが急に現れたのか。今も謎なんですって。まあ、でも、戦争が一時的にでも終わったわけですから、悪いことだけでもなかったのかもしれませんね」

と、レイラさん。


 そのレイラさんの向こうに見えたラムが少し口角を上げるのを見たトールは、「まさかな……」、と思わず背筋に冷たいものが走る気がした。



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