第86話 旅は道連れ、女は謎
トールたち3人は、翌日から『休暇』に入った。
とは言え、冒険者にはそもそも勤務の義務があるわけではないから、ギルドに届け出をする義務もないのだが、トールたち3人は今、レイラさんのスケジューリングに従ってクエストをこなしているという事情がある。
その為、せめてレイラさんには「断り」を入れておくのが筋というものだ。
「あ、見えてきましたね。あれがラジュランジ村ですよ。ほら皆さん、もう少しです、急ぎましょう!」
と、言ったのはラムではない。
「てか、レイラまでどうしてついて来てるんだよ?」
と、ジュエレーがすかさずツッコミを入れる。
「え? 言いましたよ? 私も休暇を取ることにしますって」
と、怪訝な表情で答えるレイラさん。
「そうじゃなくって! 私はどうして私たちと一緒に行動してるんだって聞いてるんだ!」
「え? だって、同じ場所に行くんですから、一緒に行ったっていいじゃないですか? 知らない間柄じゃないんだし?」
今朝のこと――。
3人が現在の拠点としている街の借家を出て、ラジュランジへと向かうために街の門へと向かったところ、そこにレイラさんが居た。
「遅かったですね? さあ、行きますよ?」
と、トールたち3人を目にしたレイラさんの第一声。
「行くって、どこへ?」
と、ジュエレー。
「え? ラジュランジですよね? 私も行こうと思ってたんでちょうどよかったです。ほら、午後になるまでには到着しないと、今日の分が無くなっちゃいますよ?」
そう言ったレイラさんは、すでに歩き出している。
なんとも、見た目とは違って意外と野放図で自分勝手なところがある人だ。
トールたちは「一緒に行く」とは一言も聞いていなかった。
「――ふふふ。ラジュランジまでの間にはレッガー峠を通過しないといけないんですが、最近そのレッガー峠周辺に野党の出没報告がありまして。一人で行くのも危険ですから、護衛を雇わないと行けないなぁって思ってたんですよ。そしたら、トールさんたちが行くっていうじゃないですか? これは、便乗しておかないとと、そう思ったわけです。あ、バーカン農場は街の門の手前を南へ行った少し先です――」
バーカン農場というのは、今日の目的地、『キングス・チェリー食べ放題』企画を行っている農場だ。
この王室御用達農場は、キングス・チェリーのほかにも、メスク・メロンや、ジュエリー・ネーブルなどのヒット商品を生み出している『大果物農場』なのだとか。
「ああ、食べ放題が終わったら、街に宿を手配しておきました。宿代は護衛費ということで私持ちでいいですから。明日は一日、ラジュランジ村周辺観光としましょう」
なんと、宿の手配まで済ませていたとは。
「――宿に入る前に、『今日の討伐分』の報酬受取をギルドで行いましょうね。いやあ、やっぱり、トールさんたちと一緒に来て正解でしたよ、ねぇ?」
何のことは無い。
道中のレッガー峠。
まあ、なんとも折よく現れた野党団20人ほど。
不運なことに、トールたち4人にけしかけた結果、全員あの世送りになってしまったというわけだ。
この野党団には事後報告OKのクエストが立てられていたため、その報酬を受け取りに行こうとレイラさんは言っている。
その際判明したのだが、このレイラ・バトンというギルドの受付嬢は、白銀級の『偵察系遊撃手』でもあったのだった。




