第82話 新しい「パーティ(かたち)」
「おい、トール! そうじゃないだろ! あー! ったく、素人がぁ! お前、ほんとに、それでダンジョンボスとか倒してきたのか? とんでもないやつだな――」
侮蔑なのか、賛辞なのか、良く分からない言葉が、トールに向かって放たれている。
声の主は、ジュエレー・ノルだ。
今3人は、レドラトー近郊にある、レガイア鉱山ダンジョンに来ていた。
今朝、レイラさんと再会したトールとラムは、ジュエレーという新しい「仲間」も紹介すると、それならいっそ、パーティ登録をされては? という提案を受け、3人でパーティを組むことになった。
パーティを組む一番の恩恵は、受注クエストの幅が広がることだ。
クエストの中には、「パーティ限定」のものもあるが、それは当然のこと、ソロ冒険者では受注できない。
単独でクエを受けずに、当該区域に突入することは構わないが、その状態でクエスト条件を達成しても、それに対する報酬はもらえない規定になっている。
もちろん、クエスト達成の記録もされない。
冒険者たちがクエストを達成する主たる目的は、報酬を得ることだが、それと共に、実績をつけることも同価値の目的である。
実績をつけ、昇格クエストを受け、ランクを上げることで、さらに上位のクエストを受けることができるようになるからだ。
「そうですね。私もいくらか魔法を使えますし、トールさんは戦士系で、ジュエレーは軽戦士系ですから、バランスは悪くないと思います」
と、ラムも同意の意を示したため、これで確定となった。
ラムがこれまで付添人としていたのは、トールの成長の為であったのだろうが、ある程度トールも成長してきている。
それに、ジュエレーと行動を共にするなら、ジュエレーの分の旅費食費も考えなければならない。
あわせて、この先のダンジョンやクエストの難易度なども考慮すれば、パーティを組んで万全を期すのは選択肢として正解だろう。
「すまん。連携というのはなかなか難しいものだな――」
トールが、最後のオークをぶった斬った後、ジュエレーにそう告げた。
「まあ、そこはおいおいと馴れていけばいいさ。しかし、お前の火力はとんでもない威力だな……。正直、驚いてる。一応、剣術の基礎は習得してることだし、私が教えることは、連携やさらに高度な剣技についてぐらいのものだろうな――。ラム、こんな掘り出しもの、よく見つけたな?」
と、ジュエレーも実のところ、トールの素質に驚いているようだ。
「ふふん、そうでしょう、そうでしょう。私もこの幸運には感謝しているところです。剣術指南については私ではどうすることもできなかったんで、そこはトールさん次第って考えてたんですが、あなたのおかげで、その問題もクリアできそうです」
ラムは、ジュエレーの加入もまたひとつの「幸運」なのではないかと、そう思い始めている。




