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第8話 スライムの特性①


 トールはさらに問いかけた。

 いったいどうしてこんなことになったのかと。


 ラムの話によれば、ラムが襲われていたのは、魔物の世界では特に珍しいことでもないらしい。

 

 魔物が生きてゆくためには、「魔力」というエネルギーが必要なのだとか。このエネルギーを補充するために、魔物たちは基本的には見境なく、生物を襲う。

 つまり、人間だろうが、魔物だろうが、動物たちだろうが、だ。


 トールが思わずラムを助けてしまったのは、言うまでもなく、彼女(?)が救いを求めてきたからだ。

 もし、ラムが『助けて――』と、声を発しなければ、魔物同士の争いになど介入することは無かっただろう。

 しかし、高位の魔物――魔将クラスならあり得るのかもしれないが、最底辺魔物のスライムが人間の言葉を話すなどという話は、聞いたことがない。


「お前、どうして人間の言葉を話せるんだ?」


 トールは率直な疑問を投げかけてみた。


『それは――。聞かない方がいいと思います。私が話せるようになったのは、随分と昔のことですが、それでも、あなた方人間からすれば、許しがたいことでしょうから』


 ラムは、少し後悔の念にさいなまれているような声色でそう答えた。


 なるほど――、と、トールは察する。


 こいつも魔物には違いないのだ。これまで生きてくるうえで、たくさんの命を奪ってきたのだろう。もちろん、人間も、だ。


「――わかった。じゃあ、どうして俺を助けた? 俺を食うつもりか?」

『え? いえいえいえ、それはないです! わたし、もう人間はお腹いっぱいで――って、あ――』


「やはりな――。いったいどれだけの人間を殺してきたんだ? まあ、今回は俺の命を救ってくれたのは事実だから、これ以上は聞かない。次、会った時はお互い敵同士だな?」

『次?』


「ああ、ここでお別れだ、ラム。俺も、村に戻って、治療をしないといけない。今はお前のおかげで血が止まってるけど、さすがに完全に治っているわけではないだろうから――」

『腕なら、もう大丈夫ですよ? もう出血はしません。もちろん、新しい腕が生えてくるわけではないですが、傷は完全に回復しているはずですから、治療の必要はないと思います』


「なんだって?」

『はい?』


 トールの疑問符に、ラムも疑問符で応じる。


 ラムが言うには、スライムの特性は、『浸食』という能力なのだという。つまり、基本的には何でも、包み込んで溶かして取り込むことができる。

 その特性をうまく使えば、傷の治療なども行える、らしい。


 想像するだけでなんとも気持ち悪く聞こえるが、実際のところはそれほどグロい状態ではないという。

 ラムほどの高位スライムになれば、取り込むのはほぼ一瞬のことで、対象が溶けてゆく様を目にすることはほとんどないのだとか。


「――じゃあ、なんで、狼たちを取り込まなかったんだ?」

『いやあ、私としたことが、数十年ぶりに『枯渇』をやらかしてしまいまして――』


「こかつ?」

『ええ、行動可能な魔力量を下回るほどに魔力を使ってしまう事です』


 たまにやっちゃうんですよ。自分の行動に必要な魔力量を計算違いで見誤ることが、ね? とラムは続けた。


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