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第77話 まるで兄妹


「それで? 一体何があったって言うんだい?」


 ジューダスは、アドルフィーネに温かい紅茶を注いだカップを手渡しながら問うた。


 ジューダスのところに衛士隊の隊長が駆け込んできたのは、3日ほど前のことだった。

 アドルフィーネさまが……! と、その隊長が伝えてきたのは、にわかには信じられない状況だった。

 アドルフィーネが城門の前に空から降ってきて、気を失っており、腹部からおびただしい出血があるという。

 顔色もかなり青白く、容体はそうとう緊急を要すると判断した隊長は、すぐに駆け出し、ジューダスのもとへとやってきたのだ。


 ジューダスは、取り敢えず急いで城門へと向かい、アドルフィーネの容態を確認し、部屋へ運ばせ聖魔術式の施術に入ったというわけだ。


「まあ、(傷が)少し深かったから、放っておいたら危ないところだったと言うのが正直なところだよ。よく、レイシュタルまで戻ってきたね。えらいぞ?」


 アドルフィーネの頭に手を乗せて、わしゃわしゃと髪をいじってやる。

 この子は、見た目は凄腕の剣士のようだが、その実、心根の優しい可愛い子だというのをジューダスは小さい頃から見てきたから知っている。


 アドルフィーネとの付き合いは、彼女が8歳の時からだから、もう16年になるか。


「や、やめろ!」

と、アドルフィーネがすこし恥ずかし気にジューダスの手を払った。こういう恥じらいを見せる辺りが可愛らしい。

 言葉とは裏腹に、それ程嫌がっていないことは良く分かっている。


「――「幻族」だ」


と、アドルフィーネが呟いた。


「「幻族」か、なるほど――。相当の使い手だったんだね。お前が不覚をとるなんて、久しく聞いたことがないよ?」


と、ジューダスは優しく問い返す。


 サンザーレでの「鑑定依頼」を消化したアドルフィーネは、帰還の道中、「幻族」の女と出会い、戦闘になり、腹を短剣で貫かれ、かろうじて逃避に成功したのだと言った。


「――まさか、『変身術式』を使うことになるとは……。あの姿はあまり見られたくないんだがな」


 アドルフィーネはなりは「剣士」だが、実は「魔術師」であることを、もちろん、ジューダスも知っている。二人は同じ師に教えを受けたのだ。


「そうか――。それで? その幻族はこちらへ向かっているのかい?」

「いや――。出会った時、あいつはレイシュタルとは逆方向、サンザーレの方へと向かっていた。こちらへは来ないと思う」


「ふむ。王朝へも報告をしないと、だね。わかった。僕の方から、少し話を入れておくことにするよ。アドルフィーネは明日、王朝へ報告に上がればいい」

「え? いや、しかし――」


「こら。傷口が消えて意識が戻ったとはいえ、消耗はかなりのものだったんだ。魔力の充填はまだ半分にも満たない。もう一日安静にしてるんだ。これは、()()()からの言いつけだぞ?」


 アドルフィーネに向かってそう告げるジューダス。

 この言い方がこの子には一番効果があることを、ジューダスは知っている。


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