第74話 リューデの夜
トールとラムディエルは、今日の目的地リューデの町に到着した。
トーレナム洞穴からは目と鼻の先だったため、まだ日が暮れるまで時間はある。
二人は予定通りギルド支部へ向かい、今日の報酬とダンジョン内で収集した素材アイテムの買取料金、あわせて2150ロピを受け取った。
これだけあれば、宿代と夕食代には充分だ。
ギルドの受付嬢に手ごろな宿を紹介してもらい、その部屋へと入ったころ、ようやく日が暮れた。
その後、宿の食堂で今晩の夕食をとり、少し町を見て回ることに。
町の規模はたいして大きくはなく、人口もサンザーレに比べるべくもないが、街道の中継地ということもあって、露店や行商の数は結構あった。
トールとラムは今日使用した分の小瓶の補充をし、明日の食糧として干し芋と干し肉を買い足す。
明日は、第一の目的地、レドラトーを目指すが、距離が結構あるため、到着するのは夜遅くになるだろう。
おそらくのところ、宿を探すのが困難なことも考えられるため、最悪の場合は、ギルド支部のロビーで一晩過ごすことになりそうだ。
「ギルド支部が夜中じゅうも解放されてるのは正直助かるな。でも、連泊は出来ないらしいから、明後日には宿を探すか、拠点になりそうな部屋を探すかしないとだな」
トールは、焼き芋を片手に、露店の明かりを眺めながらそう言った。
たまたま見つけた、小さな公園のベンチに腰掛け、少し離れた露店の列を二人並んで眺めている。
「はふはふ、んんっ、この焼き芋、甘いですよ? トールさんも早く食べてみてください。それから、次は、あそこの露店に売ってた牛串を食べるんですから――」
さっき宿で夕食をとったばかりだというのに、ラムの食欲が復活しているのは、彼女がやはり「スライム」だからだろうか。それともただの食いしん坊なのか。
「――ああ、まあ、このぐらいなら付き合えるかと思ったから、二つ買ったけど、さすがに牛串はもう食べられないよ。俺はいいから、お前の分だけ買ってやるよ。でも、それで今日は最後だぞ?」
「わかってますよ。だって、露店って、楽しいじゃないですか」
トールがこれまで幾日か生活を共にしてきて感じているのは、ラムのこの「人間らしさ」についてだ。
あまりに自然で、人間社会に対する知識も深い。
これは、彼女が悠久の時を生きる中で、「人間として」生活していた時間がかなりの期間あることを表しているといっていい。
しかし、今日、あのフード女に対してみせた、命を奪うことへ躊躇いの無い冷酷さは、まさしく「魔物」のものだと感じた。
「なあ、ラム。お前って、本当に魔物なのか? 俺にはお前の今の姿があまりに自然に見えるんだが? お前ってこれまでどんな生き方をしてきたんだ?」
トールはおそらくこれまでで一番、ラムの過去に迫った質問をしている。
トールにとって、『彼女』がただの『装備品』ではなくなってきていることを感じている証なのだろう。




