第70話 対決!オーク・ロード・タルシス
扉を開けて中を窺う。
『聴力強化』の効果により、部屋の奥から魔物らしきものの息遣いが聞こえてきた。
が、部屋の中に灯りはなく、その姿はまだ視認できない。
『灯火』――。
ラムが素早く灯りを発する魔法を展開する。すると、ラムを中心に光が広がって行き、トールの持つ「スライムの剣」の刀身も淡く輝きだした。
「トールさん、玉座に――」
「ああ、見えた。動かないな――。もう少し近づいてみるか――」
ラムの言うように、部屋の奥の玉座に座ったままじっとしているオークが一体目に入っている。大きさは――。
「おい、ラム。「ひとまわり」って話じゃなかったか――?」
近づきながら、トールがラムに向かって愚痴をこぼす。ラムの話では、ボス部屋のダンジョンボスは、外のオークより「一回り程大きい」と言っていた。が、近づくにつれその大きさは「一回り」の程度を優に超えていることがわかってくる。
それにしても、動かない。
結局、トールはそのオークのすぐそばまで到達してしまった。
(寝てるのか――?)
と、思った時だった。
――――!!
トールは咄嗟にその場にしゃがみ込む。
トールの頭上を、オークの大斧の刃が通過し空を切った。
ぐががががぁぁあ!!
言葉ではない咆哮が部屋中に響き渡る。
トールの体にびりびりと威圧感が降り注いだ。
「くっ――!!」
と、短く息をつめ、構えをとるトール。
すると、そのオークはようやく立ち上がり、両腕で大斧をもち、構えをとった。
さっきの一撃、『聴力強化』と『敏捷性向上』が無ければ、首を吹っ飛ばされるところだった。
やはり、ダンジョンボスともなれば、それなりの強者なのだと、改めて思わされる。
ぐがああ!!
と、またオークが吠える。そして両手で持った大斧を右後方に引き絞ると、そこから横薙ぎにトールに切りかかる。
「ラム、受けるぞ――!!」「ええ!!」
トールは短くラムに告げ、ラムの剣身に左手をあて、受け止めに行く。
ぎぃいん!!
と、いう衝突音。しかし、剣は折れない――。
その上、トールの踏ん張った両足は一歩も動かなかった。
ぐが!?
短い唸り声。オークの声か。
「残念だったな――。お前も強いが、俺たちのほうがもっと強いのさ。はあああ――!!」
トールは気合を上げ、剣を翻した。
ずばん! という感触がトールの腕に伝わってくる。
ぼとっという重たいものが落ちる音。そして、がらんがらんと続いて金属音が部屋のなかに木霊する――。
一つ目の音は、オークの首が落ちる音で、二つ目の音は大斧が床に落ちる音だ。
「ほらね、言ったでしょ?」
ラムがトールに微笑みかける。
「ああ、こんなに強くなってるなんて――」
トールが、眼前に仁王立ちしている首のないオーク・ロード・タルシスの体を見ながらこれに応じた。




