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第7話 ラムとトール


 トールは徐々に落ち着きを取り戻してきた。

 そうして、今の状況への理解が深まるとともに、まずは安堵の気持ちが湧いてくる。


 取り敢えず生きてはいる――。


 ついさっきまで、「死」がほぼ確実だった状況から脱し、一息ついたのち、次に湧いてくるのは、「腕」のことだ。


 トールはもう一度、自分の「右腕」を見る。


 そこに、()()()()()()()()


 スライム――。


 魔物としては、おそらく最底辺、最下級のランクに位置するものだろう。

 基本的に形はなく、どろり、または、ぷよぷよしている半透明の魔物だ。


 聞いたところによると、火に弱く、焼けば徐々に小さくなり最終的には燃え尽きる、らしい――。

 もしくは、打撃や斬撃によってダメージを与えると分裂を繰り返し、細かくなっていき、ある程度の小ささになるとそのまま消滅してしまうとも聞いている。


 しかし、トールのこれまでの人生の中で、「言葉を話せるスライムがいる」という話は聞いたことがない――。


 そいつは、未だに腕の形を成しており、先程まで握っていた剣はすでに無くなっている。

 トールはいつの間に、と思いつつ、もしかして幻覚かと疑いもしたが、周囲を見回し、狂狼ウェア・ウルフの二つに割れた死骸を目にすると、やはり現実なのだと思い知る。


「お、お前は――なんなんだ?」


 ようやく絞り出した言葉はそれだった。


『わたし? ですか?』


 さっきから聞いている女の声が返ってくる。やはり、話ができる――と、トールは再認識する。


「お前、逃げたんじゃなかったのか?」


 3匹の狂狼ウェア・ウルフに囲まれていたスライムは、狂狼ウェア・ウルフから攻撃を受けていたように見えた。

 その時、明らかにトールの頭に()()()が聞こえてきたのだ。『助けて――』と。


「『助けて』と言ったのは、お前で間違いないんだな?」


 トールは矢継やつばやに問う。

 よく考えれば、先程からのトールの問いに、まだ何も答えを返してもらっていない。答えを返すよりも先に質問を投げているからだ。


『はい、わたしで間違いありません』


 その声、スライムは、まず最後の問いに答えた。そして、


『逃げたというより、隠れてた、と言った方が正しいと思います。あなたが割って入ってくれたおかげで、身を隠すことが出来ました――』

と、次に答えたのは二つ目の質問に対してだった。


『魔力の回復を行っていたんです。最後の魔力を絞り出して叫んだもので――』


 ――と、二つ目の質問に答え切る。


 そしてスライムは、最後に一番初めの質問に()()()()回答した。


『私の名前はラムルディア・レー・ランバスカス・メリーデ・ロウ――。たぶんニンゲンさんから見れば長いので、ラムルディア、もしくはラムでもいいですよ?』と。


「ラム――?」

『はい! 木こりさんのお名前はなんて言うんですか?』

「俺? 俺の名前は、トール。トール・レイズだ」 

 


 これが、俺とラム――俺が唯一この世で装備できる「武器《相棒》」となるスライムとの出会いだった。


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