第68話 いざ、出発!
トールは訓練終了後、街路に並んでいる行商を数軒回り、幾らか残った自己資金で旅支度を整えた。
もちろん、二人分だ。
かなり資金が乏しくなってきたが、なんとか、目的地のレドラトーまでは辿り着けるだろう。
場合によっては、運搬や配達などのクエストを受けてもいいが、いくらか旅費の足しになる程度で、やはり、稼ぎというには少なすぎる。
(今さら、ラムの人型をやめてくれと言うわけにもいかないしな――)
ラムが「この格好」でいる限りは、宿代も食事代も2人分かかってしまう。かと言って、例えば姿を消して、トールのバッグなどに忍び込んでもらっていてもいいのだろうが、そうすると、二人で行動しているときと、一人で行動している時とを目撃され、ラムが人族でないということがバレてしまう危険が無いとも限らない。
(仕方がない。二人分を稼ぎつつ移動するしかないか――)
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「――それなら! レドラトーの手前、リューデで一泊なさってはどうですか?」
レイラさんが、思いついたように声を上げた。
翌日、サンザーレのギルド支部に寄り、移動の手続きをしてもらうついでに状況を話して相談してみたところ、受付嬢のレイラさんが答えた声だ。
「リューデ、ですか……?」
トールは今一度確かめるように、レイラさんに聞き返す。
「ええ。リューデの手前にトーレナム洞穴というダンジョンがありまして、そこまではここからおよそ半日ですので、昼過ぎには到着するはずです。そこでダンジョン探索をした後、リューデに向かって、報酬受取や収集品換金などを行えば、そこそこの金額になるはずです――。えーと、あ、ああ、ありました! これです。この『コボルド討伐クエスト』と、『オーク討伐クエスト』をこなせば、あわせて1800ロピになりますので、それだけあれば、宿代と食事代には充分なはずです」
なるほど、確かにそれだけあれば――。しかも、ダンジョン内の収集品で高価なものを獲得できれば、さらなるボーナスにもなりそうだ。
「ラム、どうだ?」
「いいんじゃないでしょうか。トールさんの訓練の成果も確認しておきたいですし、ちょっとした腕試しにはちょうどいいかもしれません」
ラムの返事も「快諾」といったところで問題ないだろう。
「わかった。じゃあ、そのクエストを受注することにする。達成報告は、リューデの支部でいいのか?」
と、トールはレイラさんから依頼書を受け取りながら、念のために確認を入れておく。
「はい。それでOKです。じゃあ、トールさん、道中、お気をつけて」
「ああ、レイラさんにも、いろいろと世話になった。ありがとう。それと、カイン、ああ、ギルマスにもよろしく伝えておいてくれ。じゃあ、いくよ――」
そう言い残すと、トールとラムはギルド支部の扉を開け、街道へと向かった。




