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第66話 幻族が人族に敵対する理由


 トールはここまでのラムの話を聞いて、ようやく、理解し始める。


 そもそも、このような種族間の相違点などは、幼年学校でも習わなかったし、両親が教えてもくれなかった。

 トールは木こりだったから、せいぜい森で出会う動物や昆虫について、危険か否か程度の知識を持つに過ぎないし、それで充分だったのだ。


 「魔物」に関しては、この「凪」期の間は、野外で遭遇することなどは非常に稀だし、ダンジョンに入る必要などほとんどないため、基本的には「魔物」は「危険」だという認識で、こちらから近づくことなどほぼほぼ無かったのだ。


 まして、「幻族」など、ラムから聞くまでその存在すら知らなかった。

 

 「幻族は人族の中に紛れて暮らしている」なんて、考えもしなかったから、これまでに出会って来た人の中にも、もしかしたら「幻族」の人がいたかもしれなというわけだ。


「「幻族」の中にもいいやつと悪いやつがいるのか――」


 トールは、今さらながら《《おかしな》》質問をしていると、口に出した後に気が付いてしまった。


「あ、それを言うなら、人族にだって、悪いやつはいるよな――」


 そうだ。


 何をもって、善悪を判別するか――。


 基本的な教義としては、『三罪』というものがある。

 「盗るな、殺すな、騙すな」だ。


 これは、公理教会が掲げる善悪の判断の基本教義であるが、トールたち人族の子供らは、幼年学校で「これ」をならう。

 しかし、世の中にはこれを犯して、私利私欲に走るものなど、枚挙に暇がない。


 いわゆる、「賊」というものたちだが、毎年のことだが、これの被害に遭って命を奪われたり、騙されて破産したものや、高価な金品を盗まれたものなどの話は、街中でも耳にする。


「そうですね。公理教会の言う『三罪』を善悪の基準とするなら、人族の中にもそういう輩はいますよね? その点に関しては、「人族」と「幻族」の間に変わりはありません」


 ラムがそう答える。

 

「うん。これまでの話から、「幻族」が「人族」に敵対的思想を持つようになるのも分かる気がする。いわれのない迫害や差別をもし受けたとすれば、反発するのは当然だからな」


 ただ少しばかり魔力素に親和性が高く、魔法に長けているという理由だけで、差別的な扱いを受けてきた「幻族」が、そのような「人族の世界」に対して反感を持ち、やがては、「人族」と敵対するようになるのも、ある意味、自然なことかもしれないと、トールはそう思ったのだった。



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