第59話 おもしろい!
トールは最初の勢いがどんどん削がれていくのを身に染みて感じていた。
始めの方こそ、力任せに相手の木剣をへし折っていたのだが、途中から折れなくなってしまう。
もちろん折ることを目的としているわけではないから、折れる折れないは結果でしかない。それより重要なのは、カインの受け方が上手いということだ。
木剣同士がぶつかったとしても、うまく力を往なされている。
なるほど、これが「剣術」というものなのかと、トールは改めて自分の基本がなっていないと気づかされた。
(おもしろい! やっぱり、受講して正解だった――)
トールは久しく感じていなかった、高揚感に包まれる。
「なんだ? 笑っているのか?」
カインがトールに向けてそう問いかけてきた。
「俺が? そうか、俺は今笑っているのか――。ああ、正直、楽しいんだ」
トールはそう応えつつ、打ち込みを繰り返す。もちろん、カインの身体にはかすりもしない。
――トールさんが言うから、今は何も付与魔法をかけていないけど、やっぱり、せめて聴力強化ぐらいは付けてたほうがよかったかな……。
ラムはトールとカインの訓練の様子を見てそう思ったのだが、今日のところは我慢するかと、思い直す。
やがて――。
「――よし、いいだろう。お前の剣術がド素人だというのはよくわかった。しかし、その膂力は本物だ。まったく、アドルフィーネのやつ、妙なものを押し付けていきやがったぜ」
カインはそう言ってふぅと一息溜息をつく。
「トール。まずは基本だ。そこから始めよう。むしろお前の場合はその方が早い。ああ、心配するな。さっきも言ったが、お前の膂力は本物だ。並みの教官じゃお前のその力に圧倒されて、訓練にならなかったろう。それで、変な自信をつけるよりはましだ」
カインは、木剣を担ぎつつ、トールに向かってそう言った。
「ああ。よくわかっている。カイン、いや、ギルマス。俺に稽古をつけてくれ――」
トールはカインに向かってそう告げた。
その目には闘志が、その体からは気迫が、そしてその表情からは愉悦が見て取れる。
(――まったく、なんて顔してやがる。まるで、剣術を始めたばかりの子供の様じゃないか)
「よし、しっかりと聞いて練習するんだぞ? いいか、まずは――」
カインは、トールの腕や腰、足をぐいぐいと矯正し、剣術の基本となる構えの取り方から指導を始めた。




