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第54話 鑑定仕合い


 トールは、扉の中に引っ込んだ後、すぐ後ろに控えていたラムに目配せをする。


『どういうことだ? かんていにんって、なんだよ?』


 言葉に出さずに、そう心の中で念じる。


『鑑定人――は、冒険者の実力を見極める役目のものです。おそらく、ギルマスから統一王朝へ報告を入れたのでしょう。ちょうどよかった。この際、しっかり鑑定してもらうとしましょう』

『鑑定してもらう?』


『よく聞いてください。鑑定人はあなたと仕合をして、その実力を見極めます。その際に、木剣を使って仕合うことになります――』

『それはまずいだろう? 俺は武器を装備できないんだぞ? その木剣を渡されたところで、おそらく握る事さえできないはずだ』


『ですね。だから、木剣を渡された際、取り敢えず武器としてではなくただの道具として受け取ってください。攻撃の意思がなければ掴めるのでしょう?』

『しかし、それだと、一方的に打ち込まれて終わるだろう?』


『あとは、私に任せてください。大丈夫、うまくやりますから――』


 出た――。

 ラムの、「大丈夫、うまくやります」発言。


 ラムがこういった時、方法は一定ではないが、これまでなんとかなってきているのは事実だ。

 トールは、わかったと頷き、再び扉を開けて表に出た。


「――そろそろ「アタリ」を引きたいと思っていたところだ」


 そう言うと、アドルフィーネと名乗った赤髪長髪の女戦士が、木剣の一本をトールに向かって放り投げてくる。

 トールは、木剣をただの木の棒と認識し、これで攻撃する意思を持たずに掴み取る。


 ぱしぃっと何の問題もなく受け取ることができたが、これでは戦えない。


『トールさん、木剣を、一旦背に隠して――』


 少し離れているラムからの魔法通信がトールの脳裏に響く。


 トールは言われた通り、ブンと素振りをするそぶりを見せながら、木剣を背に回す――。


(ん? 今一瞬、剣の感触が無くなったぞ?)


『OKです。たぶん、バレてないはずです。木剣を取り込んで、すぐに同じ形のものを造形トレースしました。これで戦えます!』


 背から再び腕を前に回した時には、利き腕にはしっかりと『木剣』が握られている――。


(なるほど、()()は、()()()()なのか。しかし、うまくできるものだな――)


 トールは『木剣』をまじまじと見て、そう思う。


「――さあ、いいか? 仕合いは3本勝負。2本先取で勝ちだ。木剣とはいえ、それなりの実力者が振れば、怪我では済まない場合がある。一応『寸止め』でやるが、もし打たれどころが悪かったときは――すまないが、諦めてくれ」


「諦める?」


「ああ、人生を、諦めてくれと言っている。ゆくぞ――!!」


 そういうなり、アドルフィーネが鋭く踏み込んできた。

 あっという間に間合いを詰められるトール。速い――!!


 トールは慌てて、間合いを取るように飛び退る。


 アドルフィーネの初撃がトールのもといた場所を横薙ぎにブゥンと音を立てて通過した。


「――ほう。かわしたか。これはなかなか楽しめそうだ」


 アドルフィーネはそう言って口角を上げ、赤く長い髪をかきあげた。


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