表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/128

第53話 アドルフィーネと木こり


 アドルフィーネはカインに聞いたとおり、サンザーレからトールの木こり小屋へ向かう。

 といっても、徒歩ではない。


 馬だ。


 馬はこの地域ではなかなかに高価なもので、希少性も高い。その為、統一王朝直属の特定のものにしか付与されていない。


 昨晩遅くに統一王朝の特命を受けたアドルフィーネは、その足で馬に跨り、夜通し街道を飛ばしサンザーレに入った。

 特命の内容は、サンザーレのギルドマスターから特異な冒険者が現れたという報せを受けた統一王朝が『鑑定』を決定したというものだ。

 夜中にギルドホールの門を叩き、ギルマス(カイン)の部屋へと飛び込んだアドルフィーネは、そのままソファに横になり朝日が昇る頃まで仮眠をとり、今に至る。


 まあ、まだ地面の上でなかっただけましだ。

 アドルフィーネにしてみれば、ソファであっても充分に寝心地がいいものだった。


 サンザーレの街壁門がいへきもんを出て、馬を飛ばすこと10分ほどで、目的の小屋が目に入る。

 なるほど、まさしく木こり小屋で、こんなところに『英雄候補』が潜んでいるとは世の中の誰も露にも思わないだろう。


 ここに来るまでの間、朝早くということもあり、街道をサンザーレ方面へ向かうものは誰にも出会わなかった。

 つまり、トールが今日もギルドへ向かうのであれば、まだこの小屋を出ていない可能性が高い。


 アドルフィーネは木こり小屋の外柱に馬を繋ぎ、玄関扉をノックする。


「だれだ? こんな朝早くから――」


 中から聞こえてきたのは若い男の声だ。といっても少年ではなく、青年だろう。


「朝早くからすまない。こちらも色々と忙しい身なんだ。トール・レイズは君か?」


 アドルフィーネはその声に対して扉へ向けてそれなりの音量で応える。


「女? ちょっと待ってくれ、今開けるから――」


 中から声が返ってくると、ゴトゴトと扉の内側で音がする。木戸の()()()()でも外しているのだろう。


 ぎぎぃと音が鳴り、扉が外開きに開く。すると、中から、一人の男が顔を出した。


「トール・レイズか?」


 アドルフィーネはその男に誰何する。


「ああ、トールは俺だが、あんたは?」


 その男が訝しげに答える。


「私は、アドルフィーネ・マインツァというものだ。統一王朝の『鑑定人』だ」


 アドルフィーネは即答する。

 が、おそらくのところ、『鑑定人』と言ったところで、この男には何をしに来たかわかるまい。


「統一王朝? 『かんていにん』って、なんだ?」


 案の定、そうトールが質問を返してくる。


「単刀直入に言う。君を試しに来た。悪いが、少し表に出てきて、私と仕合しあってくれないか?」


 そうだ。これこそが私の仕事、『鑑定』だ。

 『鑑定人』は鑑定対象と仕合い、その実力を見極める。

 そうして、その結果を統一王朝に伝えるのが役割だ。


 その先は――。

 私の知ったことではない。


()()()――って、戦うってことか?」


 トールが応じる。


「それ以外に()()()と言えば、()()しかないと思うが、残念ながら私は初対面の男とそういうことをするつもりはない。急いでいるといったろう? 早くしてくれないか?」


 アドルフィーネはわざとらしく揶揄って見せる。男相手だとこういう言い方の方が結果的に早く話が進むのは、これまでの経験から心得ている。


「な!? わ、わかった。少し待ってくれ。そうだな、3分でいい」

「わかった。表で待っている――」


 トールは頭を軽く下げると、扉を閉め、数分後、ひとりの女と共に表に出て来た。

 青い髪、青い瞳の女――。

 なかなかに珍しい髪色と瞳の色だが、異国のものか――。


「付添人のラムディエル――か」

「ええ。統一王朝の『鑑定人』さんだとか。実力は確かなんでしょうね? ()()()トールは、半端じゃないですよ?」

「ほう。それは楽しみだ。最近は「ハズレ」ばかりつかまされているからな。そろそろ「アタリ」を引きたいと思っていたところだ――」


 アドルフィーネはそう言うと、馬の背から木剣ぼっけんを二本取り出し、一本をトールに向かって放り投げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ