第46話 レストレー鉱山最奥部
カインは2階層の終点までやってきた。この先は3階層だ。
鉱山に入ってからまだ30分ほどしか経っていない。
なのに、「犬頭」の死骸が全く見当たらないどころか、完全に掃討されていて、一体たりとも遭遇することが無かった。
そして、居るはずのやつ――トールの姿も見えない。
(おいおい、いったいこれはどういうことなんだ? あいつの実力の問題はさておき、状況から考えられるのは、掃討されてからそれなりの時間が経過してるってことになるが……)
魔物の死骸は相当時間が経過すれば靄となって消滅してしまうのはこの世界の常識だ。そして、ある程度時間を掛け、魔力の働きにより、その靄がまた再構築されて新しい個体が生み出されると、公理教会はそう結論づけている。
正直、「冒険者」であるカインからすれば、魔物が死んだあとどうなって、また、どういう理屈で魔物が出現するのかなど、まったくどうでもいい話だ。
魔物が生まれる。殺す。また生まれる。また殺す――。
それだけで、「冒険者の仕事」は無くなることがない。
魔物が生まれなければ、「冒険者」は必要なくなるか、ただの「使い走り」にしかならないと、本気でそう思っている。
(ここまで来て出会わなかったということは、やっぱり、下に降りてったってことだよなぁ。人族の死体は死んでも消失しないからな。トールが人族で死んでたら、どこかに死体が転がってたはずだが、それも無い。つまり、まだ生きてるか、実は魔族でもう死んでしまってるか――ということになるが)
人族の中に魔族が紛れて生活していることがあるというのも公理教会の定説で、実際、悪事を働くやつの何割かは、魔族だったという結果も出ている。
そういったものは処刑された後、靄となって消滅するから、はっきりするのだ。
(――はぁ。仕方ねぇな。とにかくトールを見つけるか、死体を見つけるか、最奥部まで行って何も残ってなかったのを確認するかしないと、どうしようもないな)
カインはふぅと息を吐くと、3階層への階段を降り始めた。
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「トールさん、とうとうボス部屋まで辿り着いちゃいましたね」
「やっぱり、これ、ボス部屋の扉――だよな?」
「ですね。この先にこれまでより大きな魔力の結集を感じます。おそらく『ロード』でしょう」
「どうしようか。さすがに『ロード』の討伐まではクエストに含まれてないと思うが――」
「ですが、やり残してた場合、それを理由に昇格は見送るなんて言われるかもしれませんよ?」
「さすがにそれはないだろう? ――いや、確かに「ない」とは言えないか」
「相手は『ロード』とは言っても、結局のところ、青銅級指定ダンジョンの『ロード』です。トールさんなら、問題ないですよ」
「――仕方ない。出来るかどうかはわからんが、やっておいた方がいいのは間違いないな。行くか――」
もし倒せなかったときは、早々に撤退して、ギルドに帰ってそう伝えよう。それで昇格がお預けになるならそれは、トール自身の実力不足なのだ。
そう結論付けて、トールはボス部屋の扉を押し開いた。




