第44話 「ギルマス」カインの心情
「トールって、あのトールか?」
この冒険者ギルドのギルドマスターである、カイン・ジュダートはレイラからの報告に眉を上げた。
「はい。冒険者登録してから一週間で、ボス部屋攻略を達成しちゃった、あの、トール・レイズさんです――」
レイラ女史がカインの問いに答える。
「たしか、2日目で上位ランクモンスターの討伐記録があるとか言って報酬をどうするかと、お前が問い合わせてきたやつだったな?」
「はい。その、トールさんです。――どうしましょう。誰か上位ランクの冒険者に追いかけてもらいましょうか」
パーティ用の昇格クエストの攻略は、ソロ用の昇格クエストの攻略より数段難易度も危険度も上がる。
冒険者というのは、一人が二人になっただけでもその戦闘力はただ2倍になるというわけではないからだ。
「――いや、いい。俺が追いかける」
「マスターが、ですか!?」
「まあ、ちょうどいい機会だ。そのトールが正真正銘の実力者なのか、あるいは何かしら不正を行っているのか、この目で確かめてやる。それで? どのぐらい前に出た?」
「えーと、そうですね、25分ほど前でしょうか」
「なるほど。もしかしたら、手遅れになるかもだが、それならそれまでのものだったとあきらめるまでか――」
「そんな――。それじゃあ、わたしの寝覚めが悪くなりますよ」
「まあ、気にするな。イレギュラー発生なんて冒険者の常だ。それに対処できないようでは、結局大成することなどない。いいな? 気にするなよ?」
「ええ~。せめて、生きてたら必ず助けてあげてくださいね?」
カインは、レイラの懇願する目に、「わかった」とだけ返すと、椅子の後ろの壁に掛けてあったロングソードを手にしてギルドを出た。
まあ、駆けていくほどのこともない。
レストレー鉱山はここから1時間ほどの場所だ。
トールがギルドを出てからおおよそ30分ほど遅れて出発したとすると、トールはカインが到着するまで30分ほどは持ち堪えなければならない。
しかし、トールは昨日、ボス部屋攻略まで達成している冒険者だ。それほどの実力者なら、そのぐらいの時間は持ち堪えてもらわなければ、つじつまが合わなくなるというものだ。
(さあ、生きてるか、もう死んでるか。楽しみにしながら1時間ほど散歩するとしようか――)
カインはロングソードを背中に担ぐと、ゆっくりと歩き出した。




